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第二部・異世界への召喚編 (4_1)


 4



 ――その少女の名前はディタというらしい。レイシー王国とかいう国のお姫さまのようだ。


(この人を救うことが私の任務になるのかな)


 トモエは思った。


「その通りさ」


 ふと声がした。見れば、人智を超えた存在であり、宇宙の理の中に生きる生物、“宇宙の意志の権化”が、トモエの傍らにたたずんでいた。


「いつの間に……?」


 トモエは少し驚いた。


「トモエ、久しぶりだね。さて、いよいよ君の広域魔法少女としての戦いが始まるわけだ」


「このお姫さまを助け出すことが私の使命?」


 トモエは訊いた。


「もちろんそれもあるけれど、それだけじゃない。これはとても重要な任務なんだ」


「どういうこと? 何があったか、詳しく教えてよ」


「あっちの世界に行けば分かる。ほら――」


 “宇宙の意志の権化”は顎を動かした。その先に、いつの間にか扉が浮かび上がっている。


「扉をくぐってごらん。この向こうは異世界につながっている。このお姫さまが生きる世界だ。そこで君は理解するだろう。君が呼ばれた理由、そして任務の内容まで」


「行ってみなきゃ、ってことだね」


 トモエは扉のノブに手をかけた。そのまま、氷づけのディタの方を振り返る。


「私の名前は鶴洲トモエ。あなたの力になれるかもしれない。今からそっちに行くから、詳しい話を聞かせてくれないかな」


 トモエは云った。この時には、トモエは目の前のディタが幻影であると、はっきり気づいていた。彼女の本体は、あちらの世界にある。実際に赴かないことには、彼女を救うことはできない。



 ――分かりました――



 ディタの声が聞こえた。


 トモエは勢いよく扉を開いた。


「じゃあ、行ってくるよ」


 トモエの言葉に、“宇宙の意志の権化”は強く頷いた。トモエはしっかりと前を見据え、異世界の空間へと一歩、足を踏み出した。




 扉の向こうは、果てしない宇宙が広がっているようだった。あたり一面漆黒の闇の中を、無数の星屑が駆け抜けてゆく。トモエはその中に漂いながら、どこかに向かっているようだった。


 ふと、漆黒の空間に先ほどのお姫さまの姿が浮かび上がってきた。もちろん、これも本体ではなく幻影だろう。


「トモエさん、ありがとう」


 ディタは穏やかな微笑みをたたえながら云った。


「礼を云うのはまだ早いよ。まだあなたを助けられると決まったわけじゃない」


 トモエはそう返したが、ディタはゆっくりと首を横に振った。


「私の声を聞いてくれた。そして駆けつけてくれる。それだけで十分感謝しています」


「でも、せっかく駆けつけるのだから、ぜひとも力になりたいのだけれど。だから、何があったのか、詳しく話してくれる?」


 ディタはこくりと頷いた。


「はい。旅の間お暇でしょうし、この場を借りて詳しい話をさせていただこうと思います」


 ディタはことのいきさつを話し始めた――。





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