第一部・神さまは気まぐれ!?編 (6-2)
正宮を目の前にして、トモエの予感は確信に変わった。やはりここから、大きな気が流れ出ている。
トモエたちは、学校の生徒たちや他の参拝客に混じって、長い石の階段を上っていった。階段を上ったところに神殿があり、前の参拝客が参拝をすます度に、彼女たちは神前へと近づいていった。
いよいよ神前に立ち、トモエたちは賽銭をして2礼した。そしてかしわでを2度打ち、手を合わせる。
(星夜とこの世界でも楽しく過ごせますように……)
トモエはそう願い、ふたたび目を開けた。ふいに、門前に掛けられた白のカーテンがブワッとめくれ、門の内側がトモエの眼前に姿を現した。
その瞬間、周囲がセピア色に染まった――。
「えっ?」
トモエはあたりを見回した。自分以外、誰ひとりピクリとも動かなくなっていた。由梨もアイラまでも、参拝のポーズのままその姿勢を変えることはない。時間が止まったようだった。
――神殿へ来てくれぬか――
ふいに声がした。
「わ、私!?」
トモエは驚いて訊き返した。
――そうじゃ。左手にこちらへとつながる道がある。そこから入って来てくれ――
訳も分からないまま、トモエは言葉に従って、左手の小道から門の中へと入り込んだ。
その途端、眼前が真っ白な光で包まれた。
視界が開けると、そこには寝殿造風の大きな建物が広がっていた。縁側に十二単を着た豪華な身なりの女性が、こちらに背を向けて立っている。
「あの、私を呼んだのは、あなたですか?」
トモエが声をかけると、女性はゆっくりとこちらを振り返った。その顔を見て、トモエは驚きを隠せなかった。
「マオ……!?」
いつもの格好とはまるで異なっているが、間違いない。トモエが忘れ去られた歴史の狭間で出逢った祈祷師、マオの姿がそこにはあった。
驚いているトモエがよっぽど可笑しいのか、マオは口元を扇子で隠しながらも、ほくそ笑むのを隠しきれないようだった。




