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俺 エリク・ラングナーの朝は早い。

といっても、今日が特別な日であるからで、実際はかなり朝に弱いのだ。

俺は布団からでると、カレンダーの8月9日に×印をつける。

今日は8月9日。記念すべき初陣の日だ。

俺は、クローゼットから戦闘服を取り出すとさっさと身に付けていく。

と、部屋の扉から女性の声が聞こえた。

「エリク? なにやってるの?作戦会議の時間よ?」

俺はおもむろに扉を開けると、

「悪いな、ちょっと考え事をしていたんだ」

サラは謝ることはないわ、と優しく微笑む。

「遅れるとゴルドン教官が怖いし早くいきましょ」

ああ、と俺は美しい婚約者の背中の追ってあるきだした。














「伝令! 後方から悪魔の軍勢が進行中!

後衛右翼が壊滅! 隊列が破られました!」


それは突然で、あまりにも非常だった。


俺の思考が止まる。


所々から嘘だ!という声があがるが、闇にひかる無数の赤い光が現実だと告げる。

気がつけば俺は隣の兵士の羽をひったくって飛行を開始していた。




左腕を失った。

無我夢中で夜の樹海を疾走する。




そして、




後衛右翼の仮拠点へついた。



そこは凄惨とよぶべき他はなかった。

死体、死体の山。

俺はなぜか痛む頭を抑え、重い体にむちうってあるきだす。



「あ、ああ?」

俺の目がサラをとらえる。

ただし彼女の下半身はすでに失われている。


ボト。


目の前に血まみれの足が落ちてくる。


これはーーーーーーサラの?


「うおおおええええええええ」


吐き気と頭痛が俺をおそう。

なんだよこれ! なんだよこれ!


俺の頭に眼前の光景とまったく同じものがフラッシュバックする。

なんだよこれ!

死体の山。

下半身のないサラ。

落ちてくる足。


そして。


ーーーーーー俺の腹を貫く蜘蛛。




俺は。


ーーーーーーこの光景を知っている......?



上を見上げれば、巨大な蜘蛛がその鋭い前足を振りかぶっている。


最後のパズルピースがピッタリとはまるように。

俺の中の映像と、前の光景がシンクロした。




なんだ.........これ.....?





ズシャアアア。

俺の腹を蜘蛛の前足が貫いた。






8月9日。

エリク・ラングナーは二度目の死を迎えたのである。



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