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初陣

羽、というものがある。

とりの翼に付いているものではない。

似ているがゆえの名称である。

人工的に作られた、とりの翼に似た機械。

別段、空を飛べるというわけではない。

しかし、それを背中に装着することによって生身では不可能な超高速戦闘を可能にするのだ。

羽の導入によって、人類はより悪魔との戦闘で優位な状態を作りだすことに成功した。しかし、誰でも羽を扱えるわけではない。超高速で動き回るが故に圧倒的な動体視力、平衡感覚、空間把握能力が必要になる。そのすべてが一般人より特出している者だけが入団できるのが掃討団である。

俺はもちろん、彼らの身体能力は才能や訓練によって常人こ非ではない。

よって、樹木が鬱蒼と生い茂る樹海を、200キロを越える速度で翔んでもなんら問題はないのだ。

「そろそろ悪魔どもと接触する。ラングナー、ボーッとするな」

前を翔ぶ教官が緊張感のある声音で言う。

俺たちは掃討団の中でも更に特出した者を集めた部隊だ。よって隊列の最前線を担っている。

「大丈夫ですよ。少し心の整理をしていたんです」

ゴルドン教官は少し嘲笑を見せ

「どうした?訓練生二位のエリートで

も実戦は緊張するのか?」

俺はそんなゴルドン教官にニヤリと笑って見せた。

「いえ、悪魔を躊躇いなく殺すためです」


心なしか、部隊の移動速度が上がった気がした。





樹海を抜けると、風化して砂に埋もれた街が姿を現した。

すると教官や部隊の先輩が空中に停止した。

「見ろ、おでましだ」

誰のものとも分からない声に反応してみれば、数は100ぐらいだろうか。

身長は二メートルを越え、右手には鋭そ

うな爪、額には角がはえた悪魔がこちらへむけて歩いているのが見えた。

「いいか、作戦どおりだ。物資は心配しなくていい。存分に暴れろ」

突撃!

教官の合図とともに、俺たちは腰から銀で作られた刀を抜くと、悪魔の軍勢にむけ肉薄した。





遅い。

単純にそう感じた。

悪魔が腕を振り上げる。が、羽を装着した俺にそんな攻撃があたるはずはない。

俺はがら空きの脇の下を抜けて悪魔の背後に回り込む。

「死ね」

銀の刀が悪魔の頭を裂いた。

血飛沫があがり、それに気づいた悪魔が5体ほどこちらにむかってくる。

「まったく、こりないやつだな」

俺はそう吐き捨てると、悪魔の爪をかいくぐり、それぞれの急所を的確に切断していく。

「ひいい!?」

悲鳴。

ここは戦場。なにも悪魔だけが殺されるわけではない。むしろ、悪魔のほうが身体能力がたかいぶん人間のほうが死ぬことが多い。

無情にも、悪魔の爪が空中にいた一人の兵士の羽を破壊する。

浮遊力をうしなった体は地面にむけてまっさかさまだ。

そしてひとたび地面に落ちれば、我によこせと大漁の悪魔が蟻のようにたかりだす。

機動力を失えば終わりだ。


ここで見捨てるのも寝覚めが悪いな。


俺は数十という悪魔の群れに突っ込んだ。





どれくらい悪魔をきっていたのだろうか。

戦場となった街は悪魔や人間の死体で溢れている。

かくいう俺も何度か死にかけた。

覚悟はしていたが、訓練と実戦はやはり違う。

夕日で赤くなった空に花火のような光が上がった。

退却命令だ。

生き残った数少ない兵士が樹海に引き上げだした。




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