Knowledge is most Important 略してKimIらしい・・・
Knowledge is most Importantは近頃流行り出したVRMMOのうちの一つだ。しかし、このゲームは他のものよりも人気が高い。
その理由はこのゲームの自由度ゆえだ。種族からして、ヒューマン、エルフ、翼人、天使、悪魔……と多種多様だし、スキルの数だって数えくれないくらい多い。
知らないやつは時代遅れといってもいいくらいだ。
「っていっても、俺はやったことないんだけどな……」
偉そうに説明してみたが、俺、葦原 生はこのゲームに全然興味を持っていなかった。
…いや、全然は流石に語弊があるか。このKnowledge is most Important 通称KimI は知識こそが鍵を握る!? 新感覚のVRMMO!!
そんなキャッチフレーズだけで売り出された。そのため、どんなイラストなのか、ゲーム内の世界観はどのようなものなのかさえも全く分からなかった。
世界観は良くても、イラストは購入の決め手にしている俺は興味を持っていなかった。
…のだが、だんだんKimIの人気が絶大なものになり、そんなに人気なら面白いのかもしれないと興味を持ちだした。
ただし、ゲーム内でスクショは取れてもネット上にアップロードすることは不可能なため、イラストは未だ分からないままだ。
だから、俺はやったことは無かった。そんな俺のもとにやってきたのが、東条 東だ。
こいつは色々あって、東条という日本でも有数の財閥の社長の隠し子だったことが発覚し、今はゆるゆる生活を送っている。
「で? お前の通っている大学は本州なのに、何しに九州の俺のとこまで来たんだ」
「え~、セイ冷たいよ~。親友が遊びに来たら行けないの~」
コイツ自体がこういう風にゆるゆるしたヤツだから、無事にゆるゆる生活が送れるようになってよかったと思う。
アズマは現在東京のとある私立大学の工学部に通っている。
将来は某電子歌姫を自分で作れるぐらいに、工学をマスターしたいそうだ。
…っつーか、マスターしてもお前一人で造るのは無理じゃねぇのか?
と、俺は思うが、まあそれはおいとくか。
「遊びに来るのが悪いって言ってるわけじゃねぇよ、来るなら来るで連絡入れろっつーことだよ」
「あ~忘れてた! ごめんね~? で、今日来た用事はね~、セイにKimIちゃんやってほしかったからなんだ~」
「KimIちゃん? って、あれか、アズマお前、Knowledge is most Important の略称にちゃんつけてんのかよ」
「うん、そうそ~。 かわいいっしょ、KimIちゃんって言ったらー」
「まぁ、確かに……でも、俺は持ってないし買う予定もないからパス」
「イラスト分からないから購入する気にならないからでしょ~? でも、イラストかわいいよ~。セイ絶対気に入るよ~」
俺に向かって奇妙な動きとともに、言葉を投げかけてくる、
コイツは長年俺と一緒にいたから、俺の好みも俺以上に熟知してる…。
そんなコイツが言うんなら、買っても……ハッ!
「やめろ、暗示かけんな! 俺は今金がねぇんだからな…」
「そう言うと思って~じゃーん! KimIちゃん専用のゲーム機だよ~」
「…準備いいな。お前のか?」
「んーん、KimIちゃん専用のゲーム機は一台に付き、一人しか登録できないんだよ~。盗難防止のためにねー」
「よくできてんな。っつーと、俺用にってことか?」
「そうだよ~、わざわざ準備したんだから、やってくれるよね~?」
「タダでこれがもらえるなら、俺に断る理由もないしな」
「やった! じゃあ、はじまりのまちの次に行けるエリアまで来れるように頑張ってね~」
「なんではじまりのまちに集合じゃねぇんだ?」
「なんかねー、はじまりのまちから出ると、はじまりのまちに行けなくなるんだよ~。だから、セイが俺のとこまで来て?」
「りょーかい。じゃ、さっそく家帰ってゲームしてみるわ」
「あっ、フレンド登録はゲームの中で直接会わないと申請できないから、わかんないことあったらメールよろ~」
「いや、わざわざするのめんどいからいい」
「え~? まあいいや、じゃね~」
「おー」
めんどいと言って断った時に、どことなく悲しげな顔をアズマがした気もするが、それを気にせずに見送る。
他の人に対してはいつも明るいのに、俺と一緒に居る時だけ時折悲しげな顔をする。
…アレだ、きっとアズマは厨二病をこじらせたままなんだろう。
それで、俺にものってほしいんだろうが、俺は自分の黒歴史を封印しているからな。
アイツにのってやることはしない。
にしても、Kimiのゲーム機意外とでけぇ…
自転車で帰る+授業の教科書=帰りがマジめんどい
……しょうがねぇ、行きよりも重い荷物を持って帰るか…。
「家に帰ったわけだし、さっそくやるか」
アズマからもらったゲーム機を頭に装着する前に、時間設定の項目の中から、起床時間を選び、起床時間を明日の午前六時にしておく。
初期のころのVRMMOなどは長時間すると、人体に害が及ぶなどという問題を抱えていたが、現在はその問題は全て解決されている。
そのうえ、自分がVRMMOをやめたい時間が設定出来るようになった。
時間を設定してれば、VRMMO内で睡眠をとったら、こっちでは決めた時間に眼が覚めるとなっている。
睡眠をとるまで、その間にVRMMO内で何時間過ごしていようと、現実時間とは一切関係ないというわけだ。
ただし、一回のVRMMOプレイで過ごせる時間は最長で三十六時間。
それ以上はVRMMO内で強制睡眠させて、現実では強制起床させることになっている。
また、VRMMOを開始する時間から一時間以上でないと、この時間設定は出来ない使用になっている。
分かりやすく言えば、俺が七時にゲームを開始しようとする。
そのときに、時間設定を七時半することは出来ないが、八時には出来るということだ。
そして、七時にゲームを開始して、七時半に止めたい場合は、時間設定の項目の中から時間倍速をを選べばいい。
時間倍速はその名の通り、VRMMO内での時間と、こちらでの時間の進み方を決める。
一倍速から四倍速まであり、時間倍速の場合はタイマーを設定することもできる。
まさに至れり尽くせりな訳だ。
他のVRMMOよりもKimiはこの機能が発展してるので、それも人気の一因であるようだ。
入力が完了して、俺はゲーム機を頭に装着した。そして、俺は白い空間にいた。
つけた瞬間にその人の脳波を読み取り、そのひとにあった電波を云々と取説に書いていたが、要は俺は装着したおかげで、VRMMOを出来る状態になっているというわけだ。
この白い空間は…いったいなんだ?
「やぁ! だれか私を呼んだかね!?」
そう言って、今まではただ白が広がっていた空間に頭髪が正に原色の黄色をした二頭身の女の子が現れた。
その子は俺よりも一メートル先にぷかぷかと浮かんでいた。
…いや、俺もこの白い空間で立っているのではなく、ぷかぷかと浮かんでいるようだ。
地面も何も見えないので、納得と言えば、納得である。
「いや、呼んでねぇけど」
「いいや、この空間のことを不思議に思っただろう! それこそがこの私、KimIちゃんを呼ぶ仕組みになってるのだよ!」
「へー」
じゃあ、アズマがKimIちゃん呼びしてたのは、実際に会ったからか?
それならそれで、可愛いもの好きなアズマのことだ、二頭身のコイツは絶対ツボにハマって何か俺に言うに違いない。
ってことは、俺とアズマで呼び出されたのが違うってとこか?
「感動が薄いな君! …しかし、私は君を気に入った! そのダルッとした感じといい、猫背で黒髪黒目なのもまたいい!」
「はぁ」
「だから君に一つだけスキルを与えよう! キ・ミ・だ・け・だ・ぞ! KimIちゃんだけに!」
「ワーイ、ウレシイナ」
「…どうして、棒読み感満載なのか分からないが、君の希望を聞こうじゃないか!」
「あ、じゃあ、テイムで」
「テイム!? それ普通にやってても取得できるスキルなのだよ!? 攻略ページちゃんと見たかい!?」
「いや、世界観だけしか」
キ・ミ・だ・け・だ・ぞ!と言いながら、人差し指をぴんと立て、その人差し指を揺らすKimiを見た俺がイラッ☆としたのは間違ってないと思う。
無視しても話が進まないので、棒読みという抵抗をとらせてもらったが。
ネタバレはあまり好きじゃないので、世界観だけ見た。 まあこれからゲームを始めて困ったら有効活用するつもりだ。
俺は他のゲームでも、攻略ページを開いた携帯を片手にプレイすることが常だ。
攻略本は会社によっては俺の欲しい情報とかが載ってない時もあるから、攻略ページさまさまといったところだ。
「むー……!! オッケー! KimIちゃん特製のテイムのスキルを与えよう!」
「いや、普通でいいんだけど」
「名前と見た目はどうしようか?」
「聞いちゃいねぇ… 名前はセイカ。 見た目は大体このままで…あー、やっぱ眼の色は紫寄りな黒ができるならしてくれると嬉しい」
「紫? いやーん、欲求不満色ー!」
「好きな色なんだよ」
「紫が? 黒好きそうなのに!」
「いや、黒も好きだけど」
「じゃあ、その二つ基調にしとくね!」
「は、なにが…」
「それじゃあ楽しんでね、この世界“Knowledge is most Important”を!」
そこで、白の空間での俺の意識は途絶えた。
だから、聞こえていなかったんだ、そのあとに彼女が何を言ったかなんて。
それが自分に関わることだなんていうことも全く知らぬまま、俺はその空間から消えたのだった。
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