闇夜の邂逅 -a chance meeting-
この小説はフィクション、つまりは作者の想像力もとい、妄想力によって作り上げられた架空の物語です。
残酷な描写等がございますので、閲覧の際にはくれぐれもご注意ください。
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幼い頃の事だ。
当時まだ無知で愚かだった少年の俺は、同年代の少年達とすっかり日が暮れ、夜の帳が下りた町外れの墓場で肝試しをしていた。
怖がる奴等も当然いたのだが、まあ道中特に何事も無く無事に帰れる――筈だった。
街へと戻る一本道になっている坂を下りながら、年長の少年が「な?何も無かっただろ?」と、笑いながらそういった時だった。
女性が居た。
不自然にぽつりと道の真ん中に立っていたその女性の面立ちは少々解せないものだった。
夏場だと言うのに暑苦しそうな着物を着ており、顔は長い髪で隠れて見えなかった。
些細な好奇心に負けたのか或いは驚かそうとしたのだろう、一人の少年が女性に話しかけようとして――硬直した。
背後から見ていた俺たちは恐怖により硬直し――そして絶叫した。
話し掛けようとした少年の胸――より詳しく描写するなら心臓辺り――を貫通し背から突き出している月明かりを反射する鈍色の刃物。
ふと、視線のあった女の顔がニタリ、と歪な笑みを浮かべたのをみて背筋に悪寒が走る。
血走った目と裂けた口元が平常心を奪い、更に恐怖に拍車を掛け、より恐ろしく思わせた。
泣き叫びながら我先にと逃げ惑う少年達に、少年から刃物を抜き血に濡れたその刃物をだらりと提げながら、女はゆっくりと此方に向かってくる
余りに唐突に訪れた凄惨な殺人を目の当たりにし、恐慌状態に陥っていた俺に女は狂ったようにケタケタと笑いながら刃物を振り下ろし――
――コマ送りの様にゆっくりと流れていく刹那の中、悪魔が耳元で囁いた。
「生きたいかい?」という悪魔の言葉に、俺はただ「死にたくない」と、そう一心に願った。
今にして思い返してみれば随分とテンプレートなシチュエーションかと思う。
まるで主役《正義の味方》が登場するまでの寸劇を演じていたような、出来すぎた舞台に踊らされる道化の様だと。
想いが通じたのか、突如現れた黒い少女は難なく刃物を指の間で挟み、砕く。
あっけなく飛び散る金属片、次いで余裕の笑みを浮かべた少女の手が徐に女の方へ向けられ――
そこで俺の記憶は途切れている。
次に目が覚めた時、俺は自室のベッドに横になっていた。
夢だったのかと思うのも束の間。夢じゃないよと囁くのは机に備え付けられていた椅子に座って此方に微笑む少女《悪魔》。
いただ、明確に言える事が一つある。
間違いなくあの瞬間、俺は「絶対に死にたくない」と思い、その意を汲んだ少女の姿をした悪魔に代価を支払い生き残ったという事。
…その時支払った代価が何だったのかを、今でも俺は明確に覚えている。
それは代価というよりも一種の契約か約束か、お呪いに似た何か。
「ずっと一緒に居る」という、極めて単純かつ永続的な束縛。
だが、俺はそれを後悔することは無い。今も、これからも。
何故ならそれが自分が選択し、掴み取った結果であるから。
ぶり返した厨二心で衝動的に書いてしまった…(汗)
見直しも幾らかしましたが、誤字脱字等あれば感想などでお願いします。