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音の花火大会

作者: ジェン・プル・ヨウ
掲載日:2026/08/12

登場人物


・僕:高校生。少し内向的。彼女とは昔からの知り合い。


・彼女:高校生。明るく自然体。僕とは「友達以上、恋人未満」とも言える曖昧な関係。


二人は毎年、花火大会の日だけ一緒に過ごしている。


恋人ではない。

幼馴染というほどでもない。

でも、なぜか花火大会だけは二人でいる。


ナレーション


夏の終わり。

町では一番大きな花火大会の日。


僕は毎年、この場所に来ている。


……彼女と一緒に。


幼馴染というほど近くなく、恋人というほど遠くない。


ただ、花火大会の日だけは、なぜか一緒にいる。


今年で、何度目になるんだろう。


彼女「ねえ」


僕「ん?」


彼女「今年もここ?」


僕「だって、ここが一番静かだし」


彼女「花火大会なのに?」


僕「花火より人のほうが多いじゃん」


彼女「それは確かに」


僕「ほら、もう始まるよ」


ドン--。


二人とも空を見る。


でも、建物に遮られて花火は見えない。


彼女「……見えないね」


僕「うん」


彼女「何のために来たんだろ」


僕「花火の音を聞きに来たんじゃないの?」


彼女「そんな人いる?」


僕「ここにいるじゃん」


彼女「……私たちか」


二人は屋台で買ったものを食べながら話す。


僕「それ、また買ったの?」


彼女「好きなんだからいいでしょ」


僕「毎年それじゃん」


彼女「そっちだって毎年ラムネじゃん」


僕「これは伝統」


彼女「じゃあ私も伝統」


僕「便利な言葉だな、それ」


彼女「去年もここだったよね」


彼女「一昨年も」


彼女「その前も」


僕「……覚えてるんだ」


彼女「そりゃ覚えてるよ」


--こういうなんでもない会話が、僕は嫌いじゃなかった。


彼女「ねえ、卒業したらどうするの?」


僕「まだ決めてない」


彼女「嘘。決まってる顔してる」


僕「そっちは?」


彼女「私も……まだ」


……


ドン--。


僕「大学、遠いところ?」


彼女「……まあね」


僕「そっか」


彼女「そっちは?」


僕「僕も、たぶんここから離れる」


彼女「……そっか」


ヒューー……ドン--。


僕「ねえ」


彼女「ん?」


僕「来年も、ここにいる?」


彼女「……分からない」


僕「そっか」


彼女「そっちは?」


僕「僕?」


彼女「うん」


僕「……分からないな」


ドォン--。


彼女「今の、最後かな」


僕「たぶん」


彼女「結局、一個も見えなかったね」


僕「うん」


彼女「……来年は、ちゃんと見えるところ行こうか」


僕「来年?」


彼女「うん。来年」


僕「……約束?」


彼女「約束」


少し沈黙。


彼女「じゃあ、来年は場所ちゃんと調べてよ」


僕「なんで僕?」


彼女「今年ここ選んだの、そっちじゃん」


僕「……そうだった」


彼女「ふふっ」


僕「……ふふっ」

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