荒れた大地
山道は険しかった。
岩肌を縫うように続く細い道を、五人はゆっくり進んでいく。
やがて尾根を越えた。
ホープが足を止める。
「……ここからだ」
目の前には広い谷が広がっていた。
地図では――
森と泉がある場所のはずだった。
だがそこにあったのは、別の光景だった。
黒く焼け焦げた木々。
倒れた幹。
灰になった地面。
森は完全に焼き払われていた。
風が吹くたび、炭になった枝が崩れ落ちる。
サフィが思わず声を漏らす。
「……なにこれ」
ルークが低く言う。
「森のはずだった場所だ」
ガルドが地面を見渡す。
「竜の仕業だな」
焦げた跡があちこちに残っている。
炎で焼き尽くされた痕跡だった。
五人は慎重に焼けた森の中へ足を踏み入れた。
焦げた木の匂いが漂う。
少し進んだところで、ガルドが足を止めた。
「……おい」
その声に全員の視線が向く。
そこには――
巨大な影が横たわっていた。
竜。
地面に倒れている。
鱗に覆われた巨体。
折れた翼。
鋭い牙。
その姿は圧倒的だった。
サフィが息を呑む。
「……大きい」
思わず声が小さくなる。
ホープたちもその大きさを改めて感じていた。
竜は動かない。
ガルドが慎重に近づく。
少し見てから言った。
「……死んでる」
ルークが眉をひそめる。
「誰が?」
ホープが竜の体を見る。
その体には深い傷が刻まれていた。
大きな爪痕。
何度も引き裂かれたような跡。
ホープが言う。
「竜の爪だ」
セリアも近づいてくる。
「……竜同士」
ルークが言う。
「戦ったってことか」
ガルドが腕を組む。
「普通じゃねぇな」
竜は縄張りを争うことはあっても、群れで暴れ回ることは少ない。
ましてや――
ここまで激しい戦い。
ホープが低く言った。
「やっぱりおかしい」
そのときだった。
セリアが急に顔を上げた。
「……待って」
全員がセリアを見る。
セリアの瞳が鋭くなる。
風が静かに流れる。
風の神の加護。
それによって、セリアの感覚は以前よりも鋭くなっていた。
「何か来る」
ルークが剣に手をかける。
「どこからだ」
セリアは空を見た。
「……上」
その瞬間遠くの空から――
低い声が響いた。
グォオオオオオオオ――!!
雄叫び。
大地が震えるような咆哮。
サフィの顔からさっと血の気が引く。
「……竜」
ルークが剣を抜く。
ガルドが盾を構える。
セリアが弓を引く。
ホープも静かに構えた。
そして――
それまでおしゃべりだったサフィも、口を閉じていた。
緊張が走る。
空気が張り詰める。
竜の影が、空の向こうで動いた。




