新たな旅立ち
天上界の光が消える。
次の瞬間。
ホープたちは城の前に立っていた。
青い空。
広がる大地。
見慣れた闘神の城。
地上に戻ってきたのだ。
ルークが大きく息を吐く。
「……やっぱり地上の空気が一番だな」
ガルドも肩を回す。
「神様の前ってのは、どうにも落ち着かねぇ」
セリアは静かに空を見上げていた。
「でも、すごい場所だった」
その横でサフィが腕を組んでホープをじっと見ている。
さっきまで天上界で見せていた、おとなしい雰囲気はどこかへ消えていた。
ホープが気づく。
「……どうした?」
サフィは少し首を傾けた。
「闘神って」
じっとホープを見る。
「もっとこう……」
言葉を探す。
「たくましくて」
「かっこいい感じだと思ってた」
ルークが吹き出した。
ホープは苦笑いする。
「え、俺?」
サフィは腕を組んだまま言う。
「昔、一度だけ先代の闘神様を見たことある」
ホープの父だ。
サフィは続ける。
「すごくかっこよかった」
そしてホープを見る。
「だから」
少し間を置いて言う。
「思ってたのと違う」
ガルドが大声で笑った。
「ははは!」
ルークも肩を震わせている。
ホープは頭をかいた。
「なんか……」
「さっきと雰囲気違わない?」
サフィはきょとんとする。
「え?」
セリアが小さく笑った。
ルークがわざと大げさに言う。
「姫さま」
サフィが振り向く。
「なに」
ルークはにやりと笑う。
「それ、闘神の前で言う言葉じゃないぞ」
サフィは少しむっとする。
「だって本当だし」
ガルドがまた笑う。
ホープはため息をついた。
「先が思いやられるな……」
少し笑いながら言う。
「まあいいや」
そしてふと城の方を見る。
「……その前に」
仲間たちを見る。
「ちょっと寄りたいところがある」
ルークはすぐに分かった。
セリアも静かにうなずく。
ガルドも何も言わない。
ルークが言った。
「分かってる」
「城の前で待ってる」
ホープは軽くうなずいた。
「ありがとう」
サフィはきょとんとしていた。
「え?」
セリアが優しく言う。
「少し待とう」
サフィはまだよく分からないまま、うなずいた。
ホープは一人、城の中へ入っていく。
静かな廊下。
見慣れた城。
そして――
中庭。
そこには小さな花園があった。
季節の花が静かに咲いている。
ホープはその奥へ歩いていく。
二つの墓。
並んで立っている。
先代の闘神。
そして、その妻。
人間であり時の神。
ホープの父と母だ。
ホープは墓の前に立つ。
しばらく何も言わない。
静かな時間。
そしてゆっくり手を合わせる。
「……行ってきます」
小さく言った。
竜の異変。
新しい戦い。
まだ何が待っているか分からない。
それでもホープは守る。
この土地を。
仲間たちを。
父が守ってきたものを。
そのとき風が吹いた。
花が揺れる。
まるで――
見送っているようだった。
ホープは小さく笑った。
そして城を後にする。
城の前。
仲間たちが待っていた。
ルーク。
セリア。
ガルド。
そしてサフィ。
ホープが言う。
「待たせた」
ルークが笑う。
「いや」
ガルドが肩を鳴らす。
「これからだろ」
セリアは静かにうなずく。
サフィは腕を組んで言う。
「で?」
「どこ行くの」
ホープは空を見上げた。
遠い空の向こう。
竜の神の領域。
ホープは仲間たちを見る。
「……行こう」
五人の旅が、今始まる。
新しい冒険の始まりだった。




