神々の加護
神殿の空気は、まだ重かった。
神々はしばらく沈黙していた。
竜たちが暴れ、領地を破壊している。
雷の神でさえ傷を負った。
それほどの異変だ。
その中心へ――
闘神が向かうと言っている。
炎の神が腕を組む。
「……本当に行くつもりか」
ホープはうなずいた。
「行かないと分からないことが多すぎる」
風の神が小さく息を吐く。
「危険なのは間違いない」
土の神も低く言った。
「竜は神の中でも厄介な連中だ」
創造の神が静かに続ける。
「特に竜は種類が多い」
神殿の中央に浮かぶ光の中に、いくつもの影が映し出される。
巨大な竜の姿。
炎を吐く竜。
氷をまとった竜。
雷を纏う竜。
嵐を呼ぶ竜。
岩のような竜。
創造の神が言う。
「炎の竜」
「氷の竜」
「雷の竜」
「風の竜」
「土の竜」
「どれも強い」
神殿に重い空気が流れる。
創造の神は続けた。
「生身の人間が立ち向かうには、あまりに危険だ」
炎の神がホープを見る。
「闘神でもか?」
創造の神はうなずく。
「闘神でもだ」
そして静かに言った。
「だから――」
「神の力を貸す」
神殿がざわめく。
炎の神が笑った。
「なるほどな」
風の神も軽く頷く。
「それなら話は変わる」
創造の神がホープを見る。
「神の加護」
「神の力の一部を、人に与えるものだ」
「加護を受ければ、その神の力を使うことができる」
ホープは少し驚いた。
「そんなことができるんですか」
炎の神が笑う。
「簡単じゃないがな」
創造の神は続ける。
「人にはそれぞれ特性がある」
「相性の良い神の加護を受けた方がいい」
そして言った。
「お前の仲間たちも呼ぼう」
神殿の床に光の円が広がる。
空間が揺れる。
次の瞬間。
三つの光が現れた。
ルーク。
セリア。
ガルド。
三人は突然の光に包まれ、天上界へと転移していた。
「うおっ!?」
ルークが周囲を見回す。
「な、なんだここ……」
ガルドが目を丸くする。
「空の上……?」
セリアは静かに空を見上げた。
「……天上界」
三人の視線の先には、無数の神々。
圧倒的な存在感。
ルークが小さく言った。
「……緊張するな」
ガルドも珍しく声を潜める。
「さすがに神の前じゃな……」
ホープが苦笑した。
「大丈夫だよ」
「みんな、結構いい神たちだから」
炎の神が笑う。
「おいおい」
「俺たちがいい神か?」
創造の神が言う。
「時間がない」
「すぐに加護を与える」
そして神々を見渡す。
「それぞれの特性に合わせる」
創造の神が最初にルークを見た。
「その男」
雷の神が一歩前へ出る。
「雷だな」
雷の神の体から稲妻が走る。
「剣の速さ」
「戦いの直感」
「雷と相性がいい」
ルークが目を見開く。
「俺が……?」
雷の神が笑う。
「覚悟はいいか」
ルークは少し迷い、そしてうなずいた。
「……やります」
雷が光る。
その瞬間、ルークの体に稲妻が走った。
次に創造の神はセリアを見る。
風の神が静かに前へ出る。
「この子は私だね」
「弓」
「目」
「風を読む感覚」
風の神が微笑む。
「ぴったりだ」
風がセリアの周囲を包む。
柔らかな風。
セリアの髪が揺れる。
最後に創造の神はガルドを見る。
土の神が大きくうなずいた。
「こいつは俺だ」
「体」
「力」
「耐える力」
土の神が笑う。
「岩みたいな男だ」
大地の力がガルドの体へ流れ込む。
ガルドは驚いた顔をする。
「おお……!」
そして最後に炎の神が笑いながら前へ出た。
「さて」
ホープを見る。
「これは迷う必要ないな」
炎の神は言う。
「お前は俺だ」
「相性がぴったりだ」
ホープは少し笑った。
「やっぱりですか」
炎の神が豪快に笑う。
「当たり前だ」
「お前の拳、俺が教えただろうが」
炎が燃え上がる。
赤い炎がホープを包んだ。
そして――
炎の加護が、ホープに宿った。




