集結した神々の力
黒い感情の神力が、祠の空間を埋め尽くしていた。
怒り、憎しみ、嫉妬、孤独――
あらゆる負の感情が混ざり合い、うねりながら空を覆っている。
その中心で、シャインの身体が震えていた。
意識はない。
暴走した感情の神の力だけが、そこにあった。
そのとき――
光が走る。
一筋の槍が、闇を切り裂いた。
ドォン!!
光の槍が地面へ突き刺さり、神の鞭を弾き返す。
祠に風が吹き抜けた。
光の中から、一人の神が姿を現す。
創造の神だった。
創造の神は静かに言った。
「……来るのが遅くなってすまない」
その視線はホープではなく、シャインへ向けられていた。
少しだけ目を伏せる。
「ここまで苦しめてしまったな」
低く、悔いるように言う。
「……すまなかった」
その言葉を残し、創造の神は槍を握り直す。
創造の神の槍が光を放つ。
「この鞭を――終わらせる」
次の瞬間。
創造の神の槍が振るわれた。
轟音とともに、光の神力が神の鞭へと叩き込まれる。
だが――
黒い感情の力が、それを押し返した。
ゴォォォ……!
怒り、憎しみ、孤独。
溢れ出した負の感情が、創造の力を呑み込もうとする。
それでも創造の神は槍を押し込む。
一歩も引かない。
ホープが叫ぶ。
「創造の神!」
「これ以上力を入れたら……あなたが危ない!」
創造の神は振り向かなかった。
ただ、微かに笑った。
「……構わん」
静かな声だった。
「自分の力で抑えられるのなら」
「安いものだ」
ホープが叫ぶ。
「だめだ!!」
だが。
感情の力はあまりにも巨大だった。
怒り。
憎しみ。
孤独。
絶望。
それらすべてが渦を巻き、創造の槍を呑み込もうとしている。
創造の神の力さえ、押し潰されそうになっていた。
その瞬間だった。
創造の槍の光が――
さらに強くなる。
ホープが驚く。
「……どういうことだ」
創造の神の力ではない。
別の神力が、次々と流れ込んでいた。
炎。
大地。
風。
雷。
竜。
炎の神。
地の神。
風の神。
雷の神。
竜の神。
すべての神の力が、創造の槍へ集まっていく。
そして――
水の力も。
サフィが叫ぶ。
「……父様!」
水の神の神力が光へ重なった。
その瞬間――
ホープの剣が震えた。
闘神の剣が光る。
まるで――
その場に、もう一つの意志が集まったかのようだった。
ホープの胸が揺れる。
父の存在を感じる。
先代の闘神。
その意志もまた、ここにあった。
そのとき、声が響く。
地の神の声だった。
「ガルド!」
ガルドが顔を上げる。
地の神は豪快に笑った。
「楽しかったぞ!」
「お前に盾を作ってもらいたかったな!」
次に風が吹く。
風の神の声がセリアへ届く。
「セリア」
優しい声だった。
「あなたは賢い」
「きっと良い軍師になる」
「世界を導く人になるわ」
「自信を持ちなさい」
雷鳴が響く。
雷の神がルークへ叫ぶ。
「ルーク!」
「彼女を守れ!」
「これからも強くあれ!」
炎が揺れる。
炎の神が笑う。
「ホープ!」
豪快な声だった。
「お前とはもう少し拳で語り合いたかったぞ!」
「これからも真っ直ぐ生きろ!」
その言葉を聞いた瞬間。
サフィが前へ出た。
「……私も」
声を震わせながら言う。
「私も父様と戦う」
水の神の力がさらに強くなる。
サフィの身体からも、水の力が溢れ出した。
水の神が言う。
「……すまない」
父の声だった。
だがサフィは笑った。
涙を浮かべながら。
「大丈夫」
「父様」
ホープが叫ぶ。
「サフィ!」
「やめろ!!」
だがサフィは振り返らない。
「私は神の力はないけれど」
「神の子」
小さく息を吸う。
「だから父とともに……」
その覚悟は――
消滅だった。
ホープが叫ぶ。
「やめてくれ!!」
そのとき、創造の神が言った。
静かな声だった。
「……あとのことは」
ゆっくり振り返る。
「お前たちに託す」
「地上に生きる者たちよ」
次の瞬間。
すべての神力が重なった。
光が爆発する。
ドォォォォォン!!
創造の槍が、神の鞭を貫いた。
鞭が砕ける。
黒い感情の力が崩壊する。
そして――
光も、闇も。
すべてが消えた。
祠には、静寂だけが残った。




