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闘神の子Ⅱ  作者: ありり
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感情の神の涙

祠の奥に張り詰めた空気が満ちていた。


シャインの手に握られた神の鞭が、ゆっくりと揺れている。


その瞳は、さきほどまでの冷たい光とは違っていた。


揺れている。


怒りだけではない。


迷い。


戸惑い。


そして――動揺。


ホープの言葉が、まだ胸の中で響いている。


「……愛していた?」


シャインは小さく呟いた。


「もし……」


震える声。


「もし愛していたなら……」


顔を上げる。


その瞳に怒りが宿る。


「……なぜ言ってくれなかったんだ!」


叫びと同時に、鞭が振るわれた。


バンッ!!


空気が裂ける。


神の力を帯びた鞭が大きくうねり、地面を叩き割る。


その軌道が――


サフィへ向かう。


「サフィ!」


ホープが叫ぶ。


次の瞬間。


ホープの身体が動いていた。


サフィの腕を掴み、強く引き寄せる。


二人の横を、鞭が叩きつけた。


轟音。


石の床が割れ、破片が飛び散る。


ルークが歯を食いしばる。


「……おい」


視線を鋭くする。


「威力が上がってるぞ」


「さっきより明らかに強い」


セリアはシャインをじっと見つめていた。


ただ、その視線は鞭に向けられている。


「……違うかもしれない」


ルークが振り向く。


「何がだ?」


セリアは言った。


「シャインが鞭を扱っているんじゃない」


静かな声だった。


「逆かもしれない」


一瞬、風が止まった。


セリアは続ける。


「感情の起伏が影響している」


「怒りだけじゃない」


「悲しみも……」


そして少し言葉を選ぶ。


「もしかしたら」


「愛されていたのかもしれない」


「その動揺も」


「全部が混ざっている」


シャインを見る。


「感情の神の力が増幅されている」


「そして……」


鞭を見つめる。


「神の鞭が」


「シャインを支配しているようにも見える」


空気が重くなる。


ホープが前に出た。


「シャイン!」


強い声だった。


「その鞭を手放せ!」


シャインの肩が震える。


ホープは続ける。


「シャイン!」


拳を握る。


「俺は――」


まっすぐ言った。


「お前の友達だ!」


その言葉が響く。


すぐにルークが前に出る。


剣を構えながら叫ぶ。


「聞こえたか、シャイン!」


「ホープの友達は――」


剣先を下げる。


「俺が救う!」


セリアが弓を下ろす。


静かな声だった。


「あなたは一人じゃない」


ガルドが大きく笑う。


「そうだ!」


胸を叩く。


「俺たちはここにいる!」


そしてサフィが一歩前に出た。


まだ少し震えている。


それでも、まっすぐシャインを見る。


「シャイン」


優しい声だった。


「もう、孤独じゃない」


静寂が落ちる。


その瞬間。


シャインの瞳が揺れた。


手が震える。


鞭も微かに揺れた。


そして――


ぽたり。


一筋の涙が頬を伝った。


それは怒りの涙ではなかった。


戸惑い。


悲しみ。


そして。


初めて触れたかもしれない――


温かさ。


だが次の瞬間黒い神力が膨れ上がる。


ゴォォォォ……!


空気が震えた。


感情の力が暴れ出す。


シャインは歯を食いしばる。


「……だめだ」


苦しそうに呟く。


「止められない……」


鞭が唸る。


神力が膨張する。


シャインの感情はもう――


彼自身でも


制御できないところまで


膨れ上がっていた。

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