動揺
石の広間に、張り詰めた空気が漂っていた。
シャインの起こした風はまだ渦巻き、床の砂や石片が舞い上がっている。
ホープは一歩前に出た。
その視線は、まっすぐシャインへ向けられている。
「……シャイン」
静かに呼ぶ。
「本当に」
一瞬、息を整える。
「本当に愛されていなかったのか?」
その言葉に、シャインの手がわずかに止まった。
空気が揺れる。
ほんの一瞬だけ、攻撃の気配が緩む。
ホープは続けた。
「シャイン、その名前」
「光とか、輝くって意味だろ」
シャインの瞳が揺れる。
ホープは言った。
「愛していなかったら」
「そんな名前、つけないと思う」
その言葉が、広間に静かに響く。
次の瞬間――
「うるさい!」
シャインが叫んだ。
風が爆発する。
「黙れ!」
怒りをぶつけるように手を振る。
その衝撃がホープへ襲いかかる。
だが――
ガンッ!!
ガルドが前に出ていた。
巨大な盾が衝撃を受け止める。
床に亀裂が走る。
「ぐっ……!」
ガルドが歯を食いしばる。
「ホープ!」
だがホープは動かない。
シャインを見つめたまま、言葉を続ける。
「俺は」
少しだけ視線を落とす。
「生まれてすぐ」
「人間に預けられた」
仲間たちが静かに聞いている。
ホープは言った。
「最初は捨てられたのかと思った」
拳を握る。
「でも違った」
顔を上げる。
「俺を守るためだった」
「父さんが苦しんで決めたことだった」
静かな声だった。
だが確かな重みがあった。
ホープはシャインを見る。
「シャインもそうだったんじゃないのか?」
その言葉に、シャインの瞳が揺れる。
ホープは続ける。
「神々の影響を受けないように」
「わざと突き放した」
「冷たくした」
「守るために」
「そうするしかなかった」
シャインの呼吸が荒くなる。
「……違う」
小さく呟く。
「うるさい」
そして声が大きくなる。
「うるさい!」
怒りが爆発した。
シャインの手に、何かが現れる。
黒い光。
それが形を成す。
長い――
鞭。
神の鞭。
空気が震える。
その存在だけで、周囲の神力が揺れた。
ルークの目が鋭くなる。
「……あれ」
息を飲む。
「あの武器……」
「闘神の剣と同じレベルの力だ」
シャインが鞭を握り締める。
怒りで震えていた。
そのとき。
サフィが一歩前に出た。
小さな声だった。
「……シャイン」
全員が少し驚く。
サフィはまっすぐシャインを見る。
そして言った。
「素敵な名前だよ」
その言葉に、シャインの瞳が大きく揺れた。
次の瞬間――
バンッ!!
鞭が振り下ろされる。
地面が砕けた。
石床が割れ、衝撃波が広がる。
ルークが叫ぶ。
「避けろ!」
セリアが弓を構える。
「当たったら」
ルークが歯を食いしばる。
「あんなの」
「身体が裂けるぞ!」
だがそのとき――
「待って!」
ホープが叫んだ。
仲間たちが止まる。
ホープは振り向き、仲間を見る。
「みんな」
静かな声だった。
「シャインへの攻撃は」
「もう少し待ってほしい」
ルークが眉をひそめる。
「ホープ……」
だがホープは再びシャインを見た。
一歩前へ出る。
「シャイン」
風の中で、声を届ける。
「一緒に」
ゆっくり言う。
「答えを探しにいかないか」
シャインの手が震える。
ホープは続けた。
「本当に愛されていなかったのか」
「確かめよう」
静かな言葉だった。
「一緒に」




