ホープの想い、シャインの想い
石の広間に、静かな緊張が満ちていた。
ホープはシャインをまっすぐ見つめる。
そして、はっきりと言った。
「父さんは」
声は落ち着いていたが、強かった。
「弱くなったんじゃない」
一歩前に出る。
「守るものが出来ただけだ」
ホープの瞳が揺れない。
「守るために最後まで戦った」
拳を握る。
「命をかけて守ったんだ」
静かな空間に、その言葉が響く。
シャインの表情がわずかに変わる。
だが、すぐに元の穏やかな微笑みに戻った。
「……なるほど」
小さく笑う。
「そういう見方もあるね」
そしてゆっくりと言った。
「でも」
その声には、わずかな影があった。
「僕は違う」
淡い金色の瞳が、どこか遠くを見る。
「僕は父から拒絶された」
静かな言葉だった。
「母からも」
少し間を置く。
「そして神々からも」
視線がホープに戻る。
「友達も」
「愛するものも」
「いない」
その言葉には、怒りも悲しみも混じっていない。
ただ、事実を語るようだった。
「誰も手を差し伸べてくれなかった」
少しだけ首を傾ける。
「なのに同じ半神である君は」
ホープを見つめる。
「両親にも愛され」
「神々からも迎えられ」
「仲間もいる」
静かに微笑む。
「不公平だよね」
空気が少し重くなる。
だがホープは視線を逸らさなかった。
そして言った。
「……だったら」
ゆっくり息を吸う。
「俺がシャインの友達になる」
その言葉に、仲間たちがわずかに驚く。
ホープは続けた。
「いや」
首を振る。
「もう友達だ」
シャインの瞳がわずかに揺れる。
ホープは言う。
「覚えてる」
少しだけ笑う。
「俺が初めて天上界に行った時誰も近づかなかった」
「半神の闘神、みんな距離を置いてた」
そのとき。
「声をかけてくれたのは」
「シャイン」
ホープの声はまっすぐだった。
「嬉しかった、すごく」
少し間を置く。
「だから」
手を差し出す。
「一緒に来ないか、シャイン」
「俺たちと」
静かな誘いだった。
シャインはその手を見つめていた。
ほんの一瞬。
本当にほんの一瞬だけ。
その瞳が揺れた。
だが――
次の瞬間。
空気が変わった。
「……やっぱり」
シャインが小さく笑う。
「君は甘い」
その瞬間。
シャインの周囲の空気が渦巻いた。
風が生まれる。
轟音とともに、強い風が広間を吹き荒れる。
「っ!」
ルークが瞬時に剣を抜く。
セリアも同時に弓を構えた。
「来る!」
セリアが叫ぶ。
突風が巻き起こる。
まるで嵐のようだった。
ホープの体が後ろへ吹き飛ばされそうになる。
「ホープ!」
その瞬間。
ガルドが前に出た。
大きな腕でホープの肩を掴む。
「踏ん張れ!」
ガルドが地面に足を叩きつける。
土の力が広がり、二人の足元を固定する。
風はさらに強くなる。
だがホープは視線を逸らさない。
シャインを見つめたまま。
そして、静かに言った。
「……シャイン」
風の中で、声が届く。
「俺は」
拳を握る。
「シャインを」
少しだけ苦しそうに言う。
「傷つけたくない」




