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闘神の子Ⅱ  作者: ありり
本編
30/50

サフィ 〜孤独と迷い〜

サフィが目を覚ましたとき、そこは暗闇だった。


深く、静かな闇。


祠で水晶玉に触れた、その瞬間までは覚えている。


だが今、周囲に仲間の姿はない。


「……ここ、どこ?」


小さく呟く。


声が闇の中に吸い込まれていく。


そのとき――


闇の奥に、小さな灯りが見えた。


灰色の光。


ふわりと揺れている。


サフィは少しだけ不安そうな顔をしたが、それでも歩き出した。


近づくと、その灯りの正体が見えた。


小さな火の玉だった。


灰色の火の玉。


静かに宙に浮いている。


その火の玉が、声を発した。


「……何故戦う?」


静かな、冷たい声だった。


サフィは一瞬考える。


そして答えた。


「神々の世界を守るため」


「水の神の土地に生きるものを守るため」


少し息を吸い、続ける。


「父を守るため」


そして、少し照れながら言った。


「それから……」


「ルーク」


「セリア」


「ガルド」


そして最後に、小さく言う。


「ホープ」


灰色の火の玉が、ゆっくり揺れる。


「そう」


そして続けた。


「だが」


「この戦いが終われば」


少し間を置く。


「お前は」


「また一人だ」


サフィの表情がわずかに揺れた。


火の玉の声が続く。


「外に出ることは許されない」


「海の城」


「神の娘」


「また」


「一人」


その瞬間――


視界が揺れた。


闇が消える。


そこに現れたのは、海の城だった。


青く静かな水の中の城。


サフィがそこにいる。


一人で。


窓の外を見る。


誰もいない。


時間が流れる。


戦いが終わる。


そしてまた――


一人。


誰もいない。


ルークも。


セリアも。


ガルドも。


ホープも。


いない。


灰色の火の玉が囁く。


「進めば」


「この未来」


「また一人」


サフィの胸が締め付けられる。


孤独。


ずっと一人だった。


城の中。


外の世界は遠い。


仲間と過ごした時間が浮かぶ。


笑った時間。


一緒に旅した時間。


ホープの横に並んで歩いた時間。


「……嫌」


小さく呟く。


「一人は」


嫌だ。


みんなと一緒にいたい。


ホープの側にいたい。


灰色の火の玉が近づく。


「なら」


「ここにいればいい」


優しい声だった。


「ここなら」


「孤独はない」


「私と」


「ここで」


「一緒にいよう」


サフィの足が止まる。


体が動かない。


火の玉がゆっくり近づく。


「その体借りよう」


その瞬間――


水が弾けた。


サフィの体から、力が溢れる。


そして声が響く。


『目を覚ますのだ』


サフィの目が見開かれる。


「……父様!」


水の神の声だった。


『お前は』


『もう一人ではない』


優しく、力強い声。


『仲間がいる』


『これからも』


『一緒だ』


サフィの胸の奥に温かいものが広がる。


『そして』


『お前はお前の力で歩けばいい』


『私はこれからもお前を支える』


サフィの目に涙が浮かぶ。


だがすぐに拭った。


「……うん」


小さく頷く。


そして顔を上げる。


「私は歩く」


強く言った。


「自分で」


水が足元に集まる。


「未来は」


手を前に出す。


「自分で作る」


水が一気に集まり、渦を巻く。


そして――


灰色の火の玉へ放たれた。


水の奔流が火の玉を包み込む。


光が砕ける。


世界が揺れる。


そして――


サフィは膝をついていた。


石の床。


祠の中だった。


「……戻った」


ゆっくり立ち上がる。


そのとき。


「サフィ!」


声がした。


振り向く。


そこにいたのは――


ガルド。


セリア。


ルーク。


三人が立っていた。


サフィは少し驚いた。


そして、すぐに笑顔になる。


「みんな!」


ルークが小さく笑う。


「無事か」


セリアも頷く。


「よかった」


ガルドが腕を組む。


「あと一人だな」


四人は祠の奥を見る。


ホープ。


まだ戻っていない。


だが誰も焦ってはいなかった。


セリアが静かに言う。


「大丈夫」


ルークも頷く。


「あいつなら戻る」


ガルドが笑う。


「決まってる」


サフィも頷いた。


「うん」


四人は静かに立つ。


仲間を信じて。


ホープの帰りを待ちながら。

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