分かれ道
北の祠は、静まり返っていた。
小さな石造りの祠。
周囲には人の気配も、竜の気配もない。
風が乾いた草を揺らし、入口の影をゆっくりと動かしている。
ルークが低く言った。
「……妙だな」
ホープも頷く。
「静かすぎる」
サフィが小さく呟く。
「ここに……シャインがいるの?」
ホープは答えなかった。
ただ祠の入口を見つめている。
やがて五人は中へ入った。
祠の内部は意外に広かった。
薄暗い石の空間。
そして――
中央の台座に、五つの水晶玉が置かれていた。
青白く淡い光を放っている。
その光が、部屋の壁をぼんやり照らしていた。
セリアがすぐに言った。
「……罠」
その声は静かだったが、はっきりしていた。
ルークが周囲を見る。
「他に道は?」
ガルドが壁を叩く。
「ないな」
ホープも祠の奥を見る。
通路も扉もない。
あるのは――
五つの水晶玉だけ。
セリアが小さく言う。
「誘い込まれてる」
ガルドが肩をすくめた。
「でもここまで来て帰るわけにもいかねぇ」
そして一歩前へ出た。
水晶玉の前に立つ。
「試してみるか」
ルークが言う。
「待て」
だがガルドはもう手を伸ばしていた。
「大丈夫だろ」
そう言って――
水晶玉に触れた。
その瞬間。
水晶玉が強く光った。
「……!」
次の瞬間。
ガルドの姿が消えた。
水晶玉も同時に消える。
「ガルド!?」
ルークが叫ぶ。
セリアが周囲を見る。
「……転移」
サフィが不安そうに言う。
「消えた……」
ホープは水晶玉のあった場所を見つめていた。
そして言った。
「このままにしておくわけにはいかない」
ルークがホープを見る。
「おい」
ホープは一歩前へ出た。
「行く」
そう言って、水晶玉に触れた。
光が走る。
そして――
ホープの姿も消えた。
残ったのは三人。
ルークが舌打ちする。
「……ちっ」
セリアが言う。
「行くしかない」
サフィも頷く。
「うん」
ルークが拳を握る。
「じゃあ」
水晶玉の前へ立つ。
「後でな」
触れた。
光。
そしてルークの姿も消える。
続いてセリア。
そして最後にサフィ。
五つの水晶玉はすべて消えた。
祠の中は、再び静まり返る。
そして――
五人は、それぞれ別の場所へ転移していた。




