同じ半神、異なる愛情
天上界の神殿には、静かな光が満ちていた。
戦いの余韻を残したままの一行に、創造の神がゆっくりと口を開く。
「まずは」
穏やかな声だった。
「少し休むとよい」
炎の神が腕を組みながら笑う。
「そうだな」
「いきなり次の戦いじゃ体がもたん」
そのとき、雷の神がルークの方を見た。
「人間の剣士」
ルークが少し身構える。
「……俺?」
雷の神はうなずく。
「少し話をしよう」
風の神もセリアへ微笑んだ。
「あなたとも話したい」
「風の扱い方、なかなか見事だった」
土の神がガルドを見下ろす。
「盾の使い方気に入った」
「付き合え」
三人は顔を見合わせた。
ルークが苦笑する。
「神様とお話かよ……」
ガルドが頭をかく。
「緊張するな」
セリアは少し背筋を伸ばした。
「でも貴重な機会」
三人はそれぞれ神に導かれていった。
その様子を見ていたサフィに、声がかかる。
「サフィ」
水の神だった。
サフィが振り向く。
「父様」
水の神は近づき、優しく言った。
「少し一緒に過ごそう」
サフィはぱっと表情を明るくした。
「うん!」
いつもより少し子供のような笑顔だった。
水の神はその様子を見て、ほっとしたように目を細めた。
娘が無事で、そして元気にしている。
それだけで十分だった。
サフィは父と並んで歩き出す。
楽しそうに話しながら。
その背中は、さっきまでの戦いの緊張を忘れたように生き生きしていた。
やがて神殿には、ホープと創造の神だけが残った。
創造の神が静かに言う。
「ホープ」
ホープが顔を上げる。
「少し話がある」
そして、神殿の奥へ歩き出した。
ホープもその後を追う。
二人は別室へ入った。
静かな部屋だった。
創造の神がゆっくりと振り向く。
ホープが尋ねる。
「……何ですか?」
創造の神は少し間を置いて言った。
「シャインの話だ」
ホープの表情がわずかに変わる。
創造の神は続けた。
「シャインは先代の感情の神とエルフの女性との子だ」
ホープは静かにうなずいた。
「それは知っています」
創造の神はゆっくりと首を振る。
「だがそこから先は知らぬだろう」
ホープは黙った。
創造の神は語り始めた。
「先代の感情の神はそのエルフの女性を見捨てた」
部屋の空気が少し重くなる。
創造の神は続ける。
「子が生まれたと知っても」
静かに言った。
「関わろうとしなかった」
ホープの目が見開かれる。
創造の神は続けた。
「母親は疲れ」
「やがてその怒りをシャインへ向けるようになった」
ホープは言葉を失う。
創造の神は静かに言った。
「シャインは父からも母からも愛されず育った」
沈黙が落ちた。
ホープはゆっくりと目を伏せる。
胸の奥に、重いものが落ちる。
自分のことを思い出す。
育ての父と母。
優しかった。
そして闘神だった父。
時の神だった母。
最後まで、自分を想ってくれていた。
ホープは小さく息を吐く。
「……」
同じ半神。
同じ神と人の子。
だが――
受けた愛は、まったく違った。
正反対だった。
ホープは、静かに拳を握った。




