闘神と感情の神の出会い
竜の神の言葉のあと、しばらく誰も口を開かなかった。
風だけが静かに吹き抜けていく。
ホープは地面を見つめていた。
やがて――
ゆっくりと口を開く。
「……俺」
少し言葉を選ぶように続けた。
「父と母が亡くなって」
「闘神を継いで」
小さく息を吐く。
「初めて神々の会議に出たとき、そこで会った」
仲間たちは静かに聞いている。
ホープは続けた。
「感情の神に」
ルークが腕を組む。
「そいつがか」
ホープはうなずいた。
「当時の俺は」
少し苦笑する。
「神々から距離を置かれてた」
セリアが小さく言う。
「……半神だから?」
ホープは頷く。
「たぶん神でもない、人間でもない」
「どう扱えばいいか分からなかったんだと思う」
少し肩をすくめた。
「でもそのとき話しかけてくれた神がいた」
サフィが小さく聞く。
「それが……」
ホープは頷く。
「シャイン、感情の神だ」
その名を口にした。
「彼の名前だ」
仲間たちは少し驚く。
ホープは続けた。
「本来、神は名前を持たない」
「俺も闘神って呼ばれる」
「でも」
少しだけ間を置く。
「俺には名前がある」
「ホープ」
そして静かに言う。
「シャインも」
「名前を持ってた」
サフィが興味深そうに聞く。
「どんな神だったの?」
ホープは少し遠くを見る。
思い出すように言った。
「黄色い髪」
「耳はエルフみたいに尖ってた」
「見た目は俺より少し年上」
「物腰は柔らかい人だった」
ルークが言う。
「エルフの血か」
ホープは頷いた。
「神とエルフの子」
「半神」
セリアが小さく呟く。
「……あなたと同じ」
ホープは少し笑った。
「そうだから、話しやすかった」
少し目を細める。
「神の世界で最初にできた友達だった」
仲間たちは黙って聞いている。
ホープは続けた。
「シャインは父のことをよく知ってた」
その言葉に竜の神も静かに耳を傾けている。
ホープは言う。
「先代の闘神」
「強くて、いつも冷静で、感情に振り回されない」
「神々と戦い、領地を奪い、守る」
少し笑う。
「その姿に憧れてたって言ってた」
ガルドが腕を組む。
「闘神様らしいな」
ホープは少しだけ頷いた。
だがそのあと少しだけ表情が曇る。
「……でも」
「今思えば少し引っかかることがあった」
仲間たちは黙って聞いている。
ホープは続けた。
「最初は普通に話してた」
「でもあるとき」
ホープはゆっくり言った。
「シャインが言った」
「一緒に神々に復讐しないか」
空気が少し重くなる。
ルークが眉をひそめる。
「復讐?」
ホープは頷く。
「シャインは言った」
「神々の争いがなければ俺の父と母は死ななかった」
サフィが小さく息を呑む。
ホープは続けた。
「でも俺は断った」
迷いなく言う。
「復讐はしない」
「俺はこの土地を守る」
「そして天上界も守る」
ホープは静かに言った。
「そう答えた」
少し沈黙が流れる。
ホープは遠くを見る。
「シャインは残念だ」
それだけ言った。
「それから会うことはなくなった」
セリアが静かに聞く。
「天上界でも?」
ホープは頷く。
「神々の会議でも見なくなった」
サフィが小さく言った。
「……そんなことが」
ホープは少し俯く。
そして続けた。
「俺」
少し迷う。
「ひとつ悔やんでることがある」
ルークが聞く。
「なんだ?」
ホープはゆっくり言った。
「シャインがどうして神々に復讐したいのか理由を聞かなかった」
少しだけ拳を握る。
「もし理由を聞いて救えるなら」
「救いたかった」
ホープは俯いた。
「……そう思う」
そのときサフィがそっと手を伸ばした。
ホープの手を握る。
温かい手だった。
サフィは何も言わない。
ただ、静かに握りしめた。




