表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
闘神の子Ⅱ  作者: ありり
18/40

黒幕

倒れた竜の神の周囲には、まだ熱を帯びた風が漂っていた。


黒い巨体は地面に横たわり、静かに呼吸を繰り返している。


ホープたちは少し距離を取り、様子を見守っていた。


しばらくして――


竜の神の胸が大きく上下した。


巨大な翼がわずかに動く。


「……!」


ルークが小さく声を上げる。


セリアが弓を握り直す。


ガルドは盾を構えた。


サフィも緊張した表情で竜の神を見つめている。


やがて竜の神の瞳が、ゆっくりと開いた。


黒い瞳が周囲を見渡す。


そして巨体がわずかに持ち上がった。


大地が揺れる。


竜の神はゆっくりと体を起こそうとする。


一行に緊張が走る。


ルークが低く言う。


「……来るか?」


だが次の瞬間竜の神の瞳に宿っていたのは――


怒りではなかった。


静かな理性だった。


竜の神の視線が、ホープに止まる。


「……ホープ」


低く、落ち着いた声。


ホープは少しだけ笑った。


竜の神は深く息を吐く。


そして言った。


「礼を言う」


その声には、はっきりとした感謝が込められていた。


「我を……止めてくれた」


竜の神の視線が、ホープの後ろにいる仲間たちへ向く。


「そなたたちにも礼を言う」


「そして……謝罪する」


竜の神はゆっくりと頭を下げた。


巨大な竜が、静かに頭を垂れる。


「我が暴走で……」


「多くを危険にさらした」


その言葉を聞いてホープはほっと息を吐いた。


そして次の瞬間――


走り出した。


「竜の神!」


竜の神の首へ飛びつく。


そのまま抱きついた。


「よかった……!」


ホープの声は、心からのものだった。


竜の神は少し驚いたように目を細める。


だが、何も言わない。


ただ静かにそのまま受け止めた。


そのとき遠くから聞こえていた咆哮が、次第に消えていく。


竜たちの雄叫びが止まっていた。


セリアが周囲を見渡す。


「……戦いが」


ルークが続ける。


「止まってるな」


ガルドも空を見上げた。


「竜どもも落ち着いたみてぇだ」


竜の神が静かに言う。


「我が正気を取り戻したことで」


「他の竜たちも落ち着いたのだろう」


ホープは竜の神から離れる。


そして真剣な表情で尋ねた。


「竜の神」


「何があったんだ?」


竜の神はゆっくりと目を閉じた。


「……我は」


「感情を」


少し苦しそうに言う。


「乗っ取られていた」


サフィが驚いた顔をする。


ルークも眉をひそめた。


ホープは竜の神を見る。


「俺は」


静かに言う。


「竜の神のことを知ってる」


「こんなに怒るところ初めて見た」


竜の神は小さくうなずく。


「そうだろう」


「我は本来そのような怒りを持つ存在ではない」


竜の神の声は静かだった。


だがどこか苦しそうでもあった。


「怒りが溢れてきた」


「止められなかった」


「次第に自我が薄れていった」


ホープは首を傾げた。


「……何が起こったんだ?どうしてそんなことに」


竜の神は、しばらく沈黙した。


ゆっくりと口を開いた。


「……感情の神」


その名前を聞いた瞬間。


ホープの目が大きく見開かれた。


「……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ