影を断つ剣
炎と咆哮が渦巻く戦場の中。
ホープは立ち上がり、竜の神を見つめていた。
竜の神はなおも暴れている。
黒い巨体が大地を踏み鳴らし、炎を吐き散らす。
だがホープの頭には、さっきの言葉が残っていた。
「……影」
小さく呟く。
「影か」
そして振り向いた。
「ルーク!」
ルークが竜の神の攻撃をかわしながら振り向く。
「なんだ!」
ホープは叫ぶ。
「少しだけでいい!」
「竜の神を引きつけてくれ!」
ルークは一瞬だけ笑った。
「任せろ!」
すぐにガルドとセリアへ声を飛ばす。
「聞いたか!」
ガルドが盾を構えたまま叫ぶ。
「もちろんだ!」
セリアも弓を引きながらうなずく。
「時間を作る」
ルークの雷が走る。
セリアの矢が風を裂く。
ガルドが盾を叩き、竜の神の注意を引く。
「こっちだ、でかぶつ!」
三人は竜の神の前へ出た。
竜の神の視線がそちらへ向く。
ホープはすぐにサフィを見る。
「サフィ」
サフィが真剣な顔でうなずく。
「竜の神の後ろに回る」
ホープは言った。
「影を攻撃してみる」
サフィは迷わず答えた。
「援護する」
手を前に出す。
水の力が集まる。
「水で支える!」
ホープはうなずいた。
二人は炎の中へ走り出す。
竜の神の巨体が暴れる。
巨大な尻尾が振り回される。
ドォォォン!!
地面が砕ける。
ホープはすれすれで飛び退く。
「危なっ……!」
だが止まらない。
炎をかいくぐりながら後ろへ回り込む。
そのとき闘神の剣が――
震えた。
ホープの目が見開かれる。
「……!」
剣が光を強める。
何かに反応している。
ホープは足を止め、地面を見る。
竜の神の巨大な影が広がっている。
その中で――
一部だけ、色が違った。
サフィが指をさした。
「ホープ!」
「見て!そこ!」
ホープが視線を向ける。
サフィは言う。
「あそこの影だけ……」
「黒い!」
ホープの目が鋭くなる。
「……あれか」
闘神の剣を強く握る。
父の力。
闘神の力。
体の奥から力を引き上げる。
炎の加護が呼応する。
剣の光が増していく。
「いくぞ!」
ホープは踏み込んだ。
そして――
影へ向かって、剣を突き立てた。
「はぁぁぁぁ!!」
ドォン!!
剣が影に突き刺さる。
その瞬間。
影が――
割れた。
黒い影が砕け散る。
竜の神が咆哮する。
グォォォォォォォォォ!!
大地が震える。
苦しそうな声だった。
ルークが叫ぶ。
「来るぞ!」
セリアがすぐに言う。
「離れて!」
三人は一斉に距離を取る。
竜の神の体が大きく揺れる。
巨大な翼が暴れ、大地が裂ける。
竜の神の体が傾く。
「ホープ!」
サフィが叫ぶ。
ホープはすぐにサフィを抱き寄せた。
「離れるぞ!」
二人はその場から飛び退く。
その直後――
ドォォォォン!!
竜の神の巨体が地面へ倒れ込んだ。
大地が揺れる。
土煙が上がる。
しばらく、誰も動かなかった。
炎も静まり始める。
竜の神は動かない。
だが――
ホープが静かに近づく。
耳を澄ます。
そして言った。
「……生きてる」
ゆっくりと胸が上下している。
呼吸はある。
ただ意識はないようだった。
ホープはほっと息を吐く。
「よかった……」
そのとき。
サフィが慌てて振り向いた。
「みんな!」
ルークたちの方へ駆けていく。
「大丈夫!?」
ルークは肩を押さえていた。
「かすり傷だ」
セリアは腕に軽い傷があった。
「平気」
ガルドは笑う。
「俺は盾があるからな!」
サフィはすぐに水の力を使う。
傷を冷やし、炎の熱を抑える。
「動かないで」
「今治す」
水が優しく傷を包む。
しばらくして全員の手当てが終わった。
サフィは少し息を吐く。
そして仲間たちを見た。
ルーク。
セリア。
ガルド。
そしてホープ。
サフィは小さく笑った。
「……みんな」
優しく言う。
「無事でよかった」




