竜の神との戦い
一行は慎重に進んでいた。
空気が重い。
さっきまで感じていた竜たちの戦いの余波とは、明らかに違う。
低く――震えるような圧力。
大地がわずかに揺れている。
ゴォォォォ……
遠くで、竜の唸り声が響く。
ホープは足を止めた。
「……近い」
セリアも小さくうなずく。
風の神の加護で、空気の流れを感じ取っていた。
「すぐそこ」
ガルドが前を見る。
その先には、小さな洞窟があった。
岩肌の裂け目のような場所だ。
中は暗く、奥が見えない。
ルークが低く言う。
「この先か」
ホープはうなずいた。
「たぶん」
一行は洞窟へ入る。
足音だけが響く。
数歩進むと、出口の光が見えた。
そして――
洞窟を抜けた瞬間。
目の前の景色が開けた。
そこにいた巨大な影。
これまで見てきた竜よりも、明らかに大きい。
黒い鱗。
山のような体。
翼を広げれば、空を覆いそうなほどの巨体。
竜の神だった。
竜の神の瞳がゆっくりと動く。
ホープたちを捉える。
空気が震える。
ホープは一歩前へ出た。
「竜の神!」
声を張る。
「俺だ」
「ホープだ」
竜の神の目が細くなる。
だが次の瞬間――
竜の神の口が大きく開いた。
グォォォォ!!
低い声が響く。
「我が炎で」
声は低く、重い。
「焼き尽くす」
その瞬間。
炎が吐き出された。
ゴォォォォォ!!
巨大な炎の奔流。
ホープたちに向かって一直線に降り注ぐ。
「来るぞ!」
ガルドが前へ飛び出す。
盾を構える。
「下がれ!」
土の神の加護。
盾に岩のような力が宿る。
炎がぶつかる。
ドォォォォォ!!
凄まじい衝撃。
ガルドの足が地面にめり込む。
「ぐっ……!」
押される。
炎の力が強すぎる。
セリアがすぐに弓を引く。
風の神の加護。
矢が風を切る。
シュッ!!
竜の神の鱗に当たる。
だが――
弾かれる。
「効かない!」
ルークが舌打ちする。
炎が強すぎる。
ホープも炎の神の加護を使う。
体を炎で包む。
だがそれでも。
近づけない。
「……強すぎる」
炎の竜とは比べものにならない。
まるで炎そのものが生きているようだった。
そのときサフィが震えていた。
竜の神の圧倒的な存在。
恐怖が体を縛る。
だが前を見る。
ガルドが炎を受け止めている。
セリアが矢を放っている。
ルークが剣を握っている。
そしてホープが前に立っている。
サフィは拳を握る。
「……私だって」
手を前に出す。
水の力が集まる。
水の神の娘の力。
「はぁっ!」
水が噴き上がる。
炎へぶつかる。
ジュウゥゥゥ!!
蒸気が上がる。
炎がわずかに弱まった。
ホープの目が光る。
「今だ!」
ルークも動く。
二人が一気に炎を突破する。
闘神の剣。
雷の剣。
二つの刃が竜の神へ向かう。
ギィン!!
鱗に刃が当たる。
竜の神が咆哮する。
グォォォ!!
ホープが叫ぶ。
「竜の神!」
「何があった!」
焦りの声だった。
「何が起きてる!」
その瞬間竜の神の目が――
一瞬だけ揺れた。
竜の神の視線が、ホープの剣に向く。
闘神の剣。
その剣を見て。
竜の神の声が変わる。
「……その剣」
低く、かすれた声。
「闘神……」
そして竜の神の目が、一瞬だけ正気に戻る。
「ホープ」
その名を呼ぶ。
ホープが目を見開く。
竜の神は言った。
「我を……」
息が荒い。
「切れ」
ホープの体が止まる。
竜の神は続ける。
「さもなくば」
苦しそうな声だった。
「我はこの世界すべてを破壊する」
その言葉の直後。
竜の神の目が再び濁る。
怒りが溢れる。
グォォォォォォ!!
咆哮が大地を震わせた。




