守る!
山道を越えると、景色は一変した。
そこから先が――
竜の神の領域だった。
ホープたちは尾根の上で足を止める。
眼下に広がっていたのは、想像していたものとはまったく違う光景だった。
炎が噴き上がる。
次の瞬間、吹雪が巻き起こる。
大地が裂け、岩が空へと舞い上がる。
その中心にいたのは――
竜。
一体ではない。
何体も。
炎の竜。
氷を纏った竜。
雷をまとった竜。
巨大な翼が空を覆い、咆哮が山を震わせる。
竜同士が戦っていた。
爪がぶつかり、牙が噛み合う。
炎が大地を焼き、氷が森を凍らせる。
まるで戦場だった。
ホープたちは言葉を失う。
サフィが小さく呟いた。
「……なにこれ」
ルークが低く言う。
「想像以上だな」
ガルドも眉をひそめる。
「こりゃ……とんでもねぇ」
竜たちは互いに狂ったように戦っている。
明らかに普通ではない。
ルークが視線を外さずに言った。
「どうする」
そして横目でホープを見る。
「進むか?」
少しの沈黙。
ホープは竜たちの戦いを見つめていた。
そして言う。
「……もう少し進みたい」
ルークはすぐにうなずいた。
「分かった」
ガルドも肩を鳴らす。
「付き合うぜ」
セリアも静かに言う。
「うん」
サフィだけが少し不安そうだった。
視線が竜の戦いへ向いている。
ホープが気づく。
「サフィ」
サフィが振り向く。
ホープは言った。
「大丈夫」
少し笑う。
「守るから」
それは特別な言葉ではなかった。
ホープにとっては、ただ自然に出た言葉だった。
だがサフィは一瞬言葉を失う。
そして小さく顔をそらした。
「……別に」
少し頬が赤くなる。
その様子を見て、ルークがにやりとする。
だがそのときセリアはまだ、竜たちの戦いを見つめていた。
ルークがその横に立つ。
そして突然言った。
「大丈夫だ」
セリアが振り向く。
ルークは胸を張る。
「セリアは俺が守る!」
いつもの調子だった。
ガルドが吹き出す。
ホープも苦笑する。
だがセリアは少しだけ目を丸くしたあと――
珍しく、頬を少し赤くした。
「……ありがとう」
小さな声だった。
それを見て、ルークは一瞬固まる。
ガルドが笑いながら言う。
「おいおい」
「照れてんじゃねぇか」
ルークが慌てる。
「ち、違う!」
そのときガルドが胸を叩いた。
「安心しろ!」
大声で言う。
「俺はみんな守る!」
腕を組む。
「全部まとめてな!」
その豪快な声に、空気が少し軽くなる。
ホープも笑った。
サフィも小さく笑う。
セリアが深く息を吸う。
そして言った。
「戦闘は」
竜たちの戦場を見る。
「なるべく避けよう」
「静かに進む」
ホープもうなずいた。
「そうだな」
そしてもう一度、竜たちの戦いを見る。
炎が空を染める。
吹雪が渦巻く。
ホープは静かに言った。
「……竜の神」
少し心配そうな声だった。
「大丈夫かな」
誰も答えなかった。
だが全員、同じことを思っていた。
そして――
五人は再び歩き出す。
竜たちの戦場の奥へ。
竜の神のもとへ向かって。




