プロローグ 〜平和の終わり〜
闘神の子 続編
七年。
それが、この土地に訪れた平和の長さだった。
神々がぶつかり合い、
世界を揺るがしたあの戦いから七年。
戦いは終わり、空は静けさを取り戻した。
多くの神々は、今もこの世界に存在している。
だが――
あの戦いで、二つの神が消えた。
闘神。
そして、時の神。
二つの力は、
その日、この世から消えた。
だが、闘神の力だけは消えなかった。
その力は、一人の少年へと受け継がれた。
ホープ。
かつて騎士を目指していた少年は、
今では二十歳。
闘神として、この土地を守っている。
⸻
朝の光が城の高台を照らしていた。
闘神の城からは、広い領地が見渡せる。
森。
川。
遠くの村。
そこでは今日も人々が穏やかに暮らしていた。
人間。
エルフ。
魔族。
この土地では、種族の違いは争いの理由にはならない。
それが、闘神の領地だった。
かつて先代の闘神が守り続けた土地。
そして今は、ホープが守る場所。
高台に立つホープは、静かにその景色を見ていた。
風がマントを揺らす。
腰には一本の剣。
先代の闘神が使っていた剣だ。
ホープはゆっくりと目を閉じる。
かつて自分の中にあった力を思い出す。
時間を止める力。
世界が静止するあの感覚。
だが、その力はもうない。
時の神とともに、消えた。
それでも彼は闘神だ。
この土地を守る者。
そして――
彼は一人ではない。
城の訓練場では、今日も剣の音が響いている。
第一騎士団団長。
ルーク。
かつて共に騎士見習いだった青年は、今や騎士団を率いる存在となっていた。
その剣は、この土地を守る刃。
城壁の上では、巨大な鎧の男が腕を組んでいる。
ガルド。
重装騎士団団長。
どんな敵も通さない鉄壁の守護者。
そして森の上空。
一本の矢が空を裂いた。
遠くの的の中心に突き刺さる。
弓騎士。
偵察隊長。
セリア。
エルフの瞳は、この土地のすべてを見渡している。
かつての仲間たち。
今では、この土地を支える柱となっていた。
ホープは小さく息を吐く。
平和だった。
神々とも争いはない。
人間も、エルフも、魔族も。
この土地では共に生きている。
それが闘神の領地だった。
――だが
その空に、わずかな違和感が生まれる。
最初に気づいたのは、セリアだった。
森の上空。
彼女は空を見上げる。
雲が動いている。
風はない。
それでも雲が流れている。
ゆっくりと、重く。
まるで、空が何かに覆われていくように。
セリアの目が細くなる。
言葉は出なかった。
ただ、嫌な予感がした。
城の高台。
ホープもまた、空を見ていた。
遠くの空。
黒い雲が静かに広がっている。
まるで嵐の前触れのように。
だが、その嵐は――
ただの嵐ではない。
七年続いた平和の終わりを告げるもの。
まだ誰も知らない。
この空の向こうで、
何が目覚めようとしているのかを。
ただひとつ確かなのは。
戦いの気配が、
静かに世界へ広がり始めていたことだった。




