多過ぎて困る
ネイキッドの隣に展示されてるアメリカンバイク。
陳列されてるのは250ccから最高で1500ccまで置いてあるらしい。
確か『ハーレーダビットソン』の最高排気量が1977ccだから1500ccまで取り揃えてるのは凄いなって思う。
「奥に置いてある大型バイク、まだちょっと距離あるのにここから見てるだけでも迫力があってかっこいいね!」
僕はそんな事を口ずさみながら尻尾を振る、って言うより荒ぶらせちゃう。
「だな。車で言うところの歴代ロードスターかアルファロメオの展示会なみの迫力だな!」
父さんも僕ほどじゃないけど、どうやらテンションが上がって楽しんでくれてる。
(楽しんでくれててよかった)
けど父さんの例えはいつも車になってたまに分からない時がある。
でもまぁロードスターは僕もかっこいいと思うよ。
狩井沢とか大陸中部では年に1回のロードスターミーティングがあるくらい人気の高い車種なんだよね。
たしか誰かが『ビーナスライン』とかでよく走ってるのを見かけるって言ってたけど、僕はそこをバイクで走りたいんだ。
それはさておき、僕は陳列されてるバイク達を手前の小型種族用50ccから奥へゆっくり見ていっている。
父さんはスポーツとレプリカが陳列されてる方を見に行ってくるって言ってそっちに行っちゃった。
そのおかげで僕もゆっくり見て回れるけどね。
見てて思ったけど…綺麗に陳列されてるけどやっぱり中古車店だね。
もちろんいい意味でだよ。
だって並べられてるバイク達はたまにサイドバック付いてたり、マフラーが変えられてたりして色々手が加えられて、元々の持ち主さんの愛情が感じられるんだ。
色んな理由で手放さないといけなくなってここにいる、悲しいけどそれもライダーとして通る道なのかもしれない。
いつか僕もそう言う判断をする日が来るのかもだし。
あ、やっぱり立ちゴケとか擦った跡があるのも中にはある。
特に今立ち止まって見てるバイクが結構すごい傷がついてる。
「あらら〜このバイク…タイヤが太いし多分オーガ用のバイクかな?…マフラー横の塗装が剥げるぐらいいってるよ」
たしかこう言うのって『外装慣らし』とか『慣らし済み』って言うんだよね。
「はは…多分僕はこんな事になったら1ヶ月は落ち込んでバイクに乗れなくなっちゃうな…」
そんなまだ起きてもいない出来事を想像して落ち込みながら立ち止まってると『須万』と書いてあるネームタグを胸に付けたヒューマン族の男性店員がやって来た。
「いらっしゃいませ。お客様は今日はどんなバイクをお探しでこられたんですか?」
「え?あ、えっとですね。中型の…アメリカンを探しに来たんです!」
店員が来るのは気配で分かってたけど、バイクショップで働いてるバイクのベテランさんに話しかけられて緊張して声がおっきくなっちゃった。
恥ずかしながら挙動不審みたいになってオーバージェスチャーになってしまう。
そんなぎこちない僕に店員の須万さんは優しく接客をしてくれる。
「ちょうど今ご覧になられてるところだったんですね。見ててピンと来るバイクはありましたか?」
「ま、まだ50ccから半分ぐらいしか見てなくと特に…はは」
もぉ僕は…なんで苦笑いなんてしちゃってるんだろう…だから鈍臭くて心配だなんて言われるんだよ…。
「お止めして申し訳ございませんでした。どうぞこの後もごゆっくりと見て回ってください。失礼します」
僕が苦笑いしちゃったから下がった訳じゃないよね?
そんな事を思い込みながらバイクをまた見て回る。
50ccを見て回り終えて次に125ccのバイクが並び始めたけど、そこからは種族別にも分類が分かれていってる。
体重が重い種族のサイクロプスや巨人種は 400ccからしかないから、それら以外の種族だね。
ヒューマン、魔人、死霊系の亜人、獣人の亜人、中には足つきって概念がないナーガ種用のまである。
ちょっと奥の方のバイクを遠目に見てみると看板に『ここから先、重量種・超大型種用』って書いてあるのが読める。
それはそれでスッゴイ興味をそそられちゃうけど父さんをこれ以上待たせ過ぎるのも嫌だしまた今度にしとこ。
そう思うと125ccからのバイクもゆっくり見てられないと思って早足で250ccまで一気に来た。
ちょっとめんどくさい事に、僕はここから更に獣人のコボルト種の大型系ゴールデン・レトリバー族にも対応してるバイクを探さないといけない。
今僕はどんな顔をしてると思う?
バイクを見るのは楽しいけど、逆に多すぎて自分に合ったものを探す事に対して目を細めて口角が下がってちょっとめんどくさくなって来てる顔をしてるんだよ。
こんなんで、僕の、僕だけのバイクを見つけられるのかな?
せっかく念願のバイクなのに多過ぎて困るなんて事ある?
continue…




