心配性な友達
正午過ぎ、午前だけの大学講義が終わった後僕は親友のラブラドール・レトリーバー族で黒毛の『和也』と学食でご飯を食べ終えてこの後の話をしていた。
「この後さぁ一緒にバイクのヘルメット選びに来てくれる?」
「あぁいいよ。そう言えば空もやっと免許取れたんだな」
和也もネイキッドのバイクに乗ってて、僕は教習に行ってる間ずっと助言をもらってたんだ。
でも和也も父さんと一緒で心配性なところがあるんだけど、普段はそんなになんだけど僕がバイクに乗るとなるとこれがまたうるさくなるんだ。
「な、何だよ!お前までやっとって!」
「ほら、一時期は教習の石切先生が怖いなんて言って諦めかけてたじゃないか?」
冷静な奴で、僕みたいなのんびりやには助けになるけど、いちいち嫌なところを突いてくるのが和也が友達が少ない理由なんだよね。
本当はいい奴なのに。
「そ、そうだけど…」
僕が何も言えなくなると和也はそれを見て申し訳なさそうに謝って来てくれた。
「ごめん、責めてるわけじゃないんだ空。ただ心配だっただけなんだよ…」
「和也が心配性で友達思いなのは分かってるけど…まぁ、ありがとう」
お互いにしょんぼりしちゃったから、この事はおあいこさまって事にしておいて。
早くヘルメットを選びに行きたい気持ちと恥ずかしい事を言った事への照れくささを隠すために僕は席を立って和也を探す様に言った。
「ほら!もおそんな事はいいから早くヘルメット選びに行こう!」
「な、なんだよ。せっかちだな」
なんて言ってる和也だけど僕が今のを気にしてないのを見て安心した顔になってるのに気づいてるのは秘密だよね。
やっぱり友達とはこうじゃないと。
小さな事なんてお互いに気にしないで楽しくしないとね。
そんな僕達は大学を後にして、30分ほど離れたバイク用品店までやって来た。
僕達がやって来たお店『ワン!バイクショップ』は亜人種の中でもコボルト・狼人族などを専門にしたバイク用品店。
たしか他にも猫人族専門や巨人族専門なんかも1会社がグループを作って出してるらしいけど、よくわかんないや。
そんな僕らはショップに着いて直ぐにお目当てのヘルメット売り場に足を運んだ。
「で、空はどんなヘルメットにするの?」
「んん〜俺はねぇ、垂れ耳だから頭のトップ部分に少しゆとりがあって、ヘルメットのマズル部分がオープンにも出来るのがいいかな?」
「だよね、垂れ耳だとトップに少しゆとりがないと長時間走る時は痛くなっちゃうしね」
僕や和也みたいにコバルトの中でも垂れ耳な種はそう言う部分を結構気にしがち。
せっかく好きな事してるのに嫌な気分になりたくないからね。
「それだとこのシステムヘルメットかな。フルとジェットを使い分けれるから空の言ってるのに合うかも」
選んでくれたのはシステムヘルメットって言うやつでフルフェイスからジェットタイプになったり、手動で操作してサングラスが出て来るヘルメットだった。
「へ〜色んな機能が付いてるんだ。でも他のよりちょっと大きくない?」
「付けられてる部品が多くなってるからその分少し大きいんだよ。でも空の言ってるやつだとこれになると思うよ」
実際に手に取って確かめてみよう。
「あ、空。被る時はあそこのフェイスカバーつけないとだよ」
和也は僕がそのまま被ると思ったみたいで、商品棚に掛けられている不織布のフェイスカバーを指差した。
「ちょっと手に取って確かめてるだけだよ…」
僕の疑われ様に少し呆れちゃうよ、そんな馬鹿ばっかりやってたらそもそもバイクの免許すら取れてないよ。
「ごめんごめん、そんな不貞腐れるなって」
「俺が馬鹿するか心配するのもいいけど。和也は僕の逆で心配性すぎるんだよ」
こう言うことを言うと絶対に。
「何事も『〜すぎる』ぐらいがいい時の方が多いんだよ」
って帰って来るんだよな。
いつも通りだな。
「…ほんと流石はA型だよ」
まぁ多分、和也自身の性格がってのもある。
そう言うやつなんだ僕の親友は。
「そんな事より早くヘルメット選びなよ、俺だって展示されてるバイク見たいんだから」
バイク見たさにそわそわし始めた和也に少し面白くなっちゃいながら答える。
「ハハ、分かってるよ。俺もバイク見たいから選んじゃうね」
そうして僕が選んだのは、結局和也がオススメしてくれたシステムヘルメットのマットグレーを買って後はバイクを眺めて今日は解散した。
「早く俺だけのバイクに乗りたいな〜」
continue…




