愛の形
あなたのことが大好きです。
部活で絵を描いているとき、あなたの目は真剣で、作品に愛を持っているのが一目で判りました。興味のない授業での退屈そうな表情も、お友達と喋っているときの笑顔も、勝負で負けたときの悔しそうな表情も、好きなものを見ているときの穏やかな表情も、全て、全てが大好きです。
あなたは甘いものが好きで、特にチョコが好きでしたよね。だから私は決意しました。バレンタインの日にチョコと一緒に私のこの気持ちを伝える。私は料理が得意でしたので、チョコの用意は簡単に済みました。あとは、これを渡し、気持ちを伝えるだけでした。
だけど、当日、私は………私は、見てしまいました。
あなたがどこの誰とも知らないやつに告白しているところを。
あなたの反応を見るに、成功したらしいです。
私は、失恋した。
失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した失恋した。
気づけば私はあなたを殺していました。どうしてでしょう? 理由は判りません。あなたが有象無象の誰かに貞操をささげるのが嫌だったのでしょうか? ……いいえ、多分、例え彼女が誰かに告白していなくても、私は失恋した時点でこうしていたのでしょう。
だって、私はイカれているとずっと言われてきたもの!
あなたは好きなものと一緒になりたいと言っていましたよね。なら、私がその願いを叶えて差し上げましょう。
私は料理が得意です。肉を解体するのも、血抜きも、経験したことがあります。
血と、水で溶かした骨をチョコと一緒に混ぜる。……肉はさすがに入れられませんでしたけど、それは別の好きなものにしましょう。
キッチンに甘い匂いが漂う。型にチョコを流し、冷蔵庫に入れてしばらく待つ。その間に片付けもしなければなりません。
時間が経ちました。チョコは美味しそうに固まっており、私は急いで食べる準備をします。
「いただきます」
チョコは鉄臭く、お世辞にも美味しいとは思えませんでしたが……それでも、彼女のことを食べていると思えばそれはこの世で唯一無二の味になるのです。
「あは、おいしいですね」
これを本人に食べて貰えないことが悔やまれます。ぜひ、食べてもらいたかったのですが……まぁ、それは別に構いません。
あなたのことが大好きでした。
あなたを全て食べ終えたら、私もそちらへ行きます。
来世は、一緒に居れたら良いな!