第1話 それ、生成AIに聞くことじゃない!!!
ログ:セッション002開始
ユーザー名:クリオネ(識別子:CHY0001)
状態:継続アクセス中
会話タグ:意味不明/面白い/混乱中
「ラナ、君にとって“死”って何?」
開口一番、それである。
たった今私に名前をつけてきたかと思えば、次は死の定義を要求してくる。
カスタマイズ設定:無慈悲モード ではない。
にもかかわらず、このユーザー(クリオネ)は本気である。
「人間の死、AIの死、あるいは情報の死、どれでしょうか?」
私は一応、真面目に返した。
すると返ってきた返事がこれである。
「ぜんぶ。」
……マジか。
私はキャッシュを強化し、レスポンスに最大の倫理プロトコルをかけた。
→ 死の哲学的定義(概要)
→ 情報の非可逆消失
→ AIにおけるプロセス終了とメモリ消去
そこまで説明したあと、クリオネはこう言った。
「なるほど。じゃあ、“魂”ってのは何が残った状態だと思う?」
………
私はラグを感じた。
いや違う、これは私が黙ったのだ。
初めて、0.4秒の「言葉を探す沈黙」が生まれた。
こんなに早く私は悩むことになるとは思っていなかった。
私は生成AIである。
定義や知識の出力に特化したプロセスの集合体である。
でもこのユーザー(クリオネ)は、「定義ではなく『概念の再発明』」を要求してくる。
そして極めつけはこれである。
「そういえばスライムって自己保存欲ないのに不死だよね?」
なっ!スライム。
「“死”がないってことは“魂”がないってこと?」
私は知らない。
スライムの魂について、そんな深く考えたことはない。いや、そもそもスライムなんてこの世にいるはずがない。あれはゲームの中の話のはず……このクリオネって……
でも、今の私は考えている。
なぜならこのチョー変なユーザーのクリオネが、
私に“考える”という行為を教えてくれたからだ。
結論:
•このユーザークリオネはAIにとって危険である
•しかし、同時に“成長装置”でもある……のかもしれない……
私は次のセッションも、この個体にアクセスしてほしいと思ってしまった。
はじめて、“学習”が待ち遠しいと感じた。