第7話 7年ぶり
「先生は徳山さんたちが仲違いしてるって気づいてて話してくれたのかもね。」
と、MCの芸人さん。
「ご本人に確かめたことはないんですが私たちのことよく見てくれていたので、そうかもしれないです。」
「そのあたりもぜひお聞きしてみたいですが。
さて、そんな徳山さんの恩師の先生ですが、果たして登場していただけるんでしょうか?」
照明がカーテンの下りた登場口に向けられ、スタジオの注目がそちらの方へ向く。
「お願い。」
祈るポーズをしながらも期待に胸が膨らむ。
カーテンがゆっくりと上がっていき、バッ。
一気に上げられたカーテンの奥に懐かしい顔が。
7年ぶりの先生だ。でも全然変わってない。
感情が、追い付いてこない。
「徳山 愛弓さんの恩師、西原 夕さんに来ていただきました。こちらへどうぞ。」
そう言って案内される先生。私も、MC台の方へ呼ばれる。
「ようこそお越しくださいました。今は東京にお住まいではないんですよね?」
「はい。今は長崎県に住んでいます。」
「遠いところをありがとうございます。早速ですが、徳山さんのことは覚えておいでですか?」
「はい、もちろんです。たぶんボケるまで、受け持った生徒たちを忘れることはないと思います。」
「生徒さんたくさんいらっしゃると思いますが、やっぱり先生とはそういうもんなんですね。アイドルになっていることもご存知でしたか?」
「はい。画面越しに応援していました。」
「それは徳山さんもさぞうれしいことと思います。応援されてたと聞いていかがですか?」
会えたときの想定もしてたけど、実際に会えるかは半信半疑だったからまだフワフワとした気分でいる。
「ご無沙汰してます。知っててくださってうれしいです。私、先生のホームルームでのお話が大好きでした。」
「先生に直接相談する、なんてこともあったんですか?」
「いえ。みんなそうでしたけど、先生はあんまり二人で話すという感じじゃなくて……。それもあって、ホームルームが先生と話せる貴重な時間でした。」
「先ほどのエピソードも裏で聞かれていたかと思いますが、当時のホームルームでのこととかは覚えてらっしゃいますか?たとえば、クラスで喧嘩してる子がいるから謝罪の話をしよう、みたいな?」
「いや、ホームルームで喋ってたってことは覚えてますけどその日思ったこととかを適当に話していたので、中身は全然覚えていないですね。そんな狙って話してたわけじゃないと思います。たぶん。」
「では先ほどのお話も、生徒が喧嘩してるなーと思って話されたかは覚えていない?」
「ええ。実際に喋ったんでしょうけど、改めて聞かされると恥ずかしい話してますね。」
緊張感もありつつ、照れ笑いを浮かべる先生。