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第76話 ひぃ ふぅ みぃ

最終話

「よーしよしよし。」

 赤ちゃんを抱っこすると結構腕が張るけど、お日さまの香りがして何だか手放せない。



 五島での結婚式から数年後、なかなか全員が集まる機会はなかったが今日はあの式で会した3組が久しぶりに集った。

 とはいえ、先生は部活があるとのことで不在。もうすぐ帰ってくるらしい。


 お宅には何度もお邪魔しているが、今日来てみると戸棚の中のくまの貯金箱が2つに増えていた。

 色違いボーダー柄のマフラーが巻かれているのが、何だかとっても可愛らしい。またいっぱい二人の、そして家族の思い出増やしていってくださいね。


 先輩たちは、この数年の間に親となりこの子がその一人息子。

 お二人の愛の結晶である無垢なレンズを覗き込んで、心で会話する。


『ひぃ ふぅ みぃ よぉ いつ むぅ なな やぁ

 ここ とお

 あまり ひとつ ふたつ みつ……。


 意味わかる?

 いち、に、さん、しの別の言い方なんだって。


 人はね、生まれた瞬間に自分との付き合いが始まり、誰かと出会った瞬間にその人との付き合いが始まる。

 今、自分と、パパママとはひぃと少しだね。

 私も、生まれたときから知ってるからおんなじ。

 私の娘にはまだ会ってもらってないけど、近々その瞬間は訪れる。


 人と出会いは、不思議なもの。

 縁と言われるように、無理矢理くっつこうくっつけようとしても、また反対に無理して遠ざかろう遠ざけようとしても何かの力によって、時には人の力によって結ばれたり解けたりする。

 その1つ1つに、理屈じゃない意味があるんだと思うの。


 あなたがここにいるのは、パパとママがしっかりと結ばれているから。

 幾度となく解けかけ幾度となく結ばれかけた、私が知る限りは一番不思議な関係。結ばれるべくして結ばれた関係。


 だから、あなたはただここにいるだけで素晴らしい。それは私たちもおんなじで、一人ひとりがみんなそう。


 まだ始まったばかりの人生。この先、しんどく思う結びつきもあることでしょう。

 無理矢理切ろうとしてそのときは切れなくても、後から思い返すと解けていた縁。振り返ってよく見てごらん?きっと、一時絡まってしまってただけだから。

 無理して遠ざけようとしても、後に気付けば結ばれていた縁。よーく思い返してごらん?きっとそれは、きれいに編み込まれているはずだから。



 いつか、パパとママの『とお あまり ふたつ』教えてあげる。その役目はパパでもないママでもない、私の役目だから。神様が私に与えた、私の役目だから。』

最後まで読んでくださった方、ありがとうございました。

また次の話でお会いしましょう。

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