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第74話 七夕婚

 五島の旅から戻った後、私は目まぐるしい日々を送った。

 仕事の合間を縫っては引っ越しの準備や不動産の内見に行き、年末には夕のご実家へご挨拶に行った。

 抱えていった申し訳ない気持ちが一瞬にして吹き飛ぶくらい、お義母様にはすんごい勢いで感謝されてしまった。


 彼の方は、新年度に都立高校に職場を移した。彼が転職活動している間に、私は今の住まいを見つけた。

 彼は言ってたとおり私のおじいちゃんおばあちゃんにも挨拶をしてくれた。二人にもたくさん祝ってもらって、父も喜んでるよと言われたことが何より嬉しかった。



 二人で暮らし始めて数か月が経ちバタバタもちょうど落ち着いた頃、7月7日に入籍をした。事務所の人にSNSでウェディングフォトとか出しますか?と言われたけど、何となく苦手だったのでファンの方に向けた声明文だけを出した。

 一般人との結婚だし私もいい歳だから大ニュースにはならなかったけど、翌日は七夕婚の文字が躍った。

 少しむず痒かった。私にこんな日がこようとは。


 それから、結婚式をしようかっていう話にもなった。私はどっちでも良かったけど、どうしても私のドレス姿が見たいと珍しく彼が乗り気だったので私もその気になった。

 その点については、お母さんと彼の意気投合っぷりはすごかった。それなら場所は五島がいいなと言った。

 お互いの家族とあゆちゃんたちにもまた来てもらって、あと早矢香を呼ぶくらい。小規模でやって、あと彼が五島でお世話になった方々に挨拶する機会にもなればと思った。



「ただいま。遅くなってごめんね。」


「おかえりなさい。ううん、仕事の方は大丈夫?」


「うん。」


 日取りは、冬休み期間中でもある年始になった。お家でゆっくりしたかったかもしれないが、みんな年明けから旅行できるなんていい年になりそうと言ってくれた。

 彼は最近テスト前で忙しそうだが、今日は式場の方とリモートでの打ち合わせがあり急いで帰ってきてもらった。


 準備は色々大変だったが彼と二人三脚、ときどき喧嘩しながらだいたい仲良くしながらすべて完了した。

 結婚式を2日後に控え明日、五島に向けて発つ。

 寝る前に、彼が淹れてくれたほうじ茶を飲む。疲れた日とかには、何も言わなくてもはちみつや生姜入りのほうじ茶を淹れてくれる。すると自然とよく眠れる。


 今日も疲れた顔しちゃってたかな?

「いよいよだね。」


「うん。なんか疲れたね。」


「正直すぎ。本番は明後日なんだから。

 でも、疲れたー。私死ぬ前は何も食べなくていいから、夕の淹れるこのお茶が飲みたいかも。」


「俺は何も食べなくても飲まなくてもいいから、えりかの顔がみたいな。」

 そんなの、私も一緒だし。

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