第73話 五島旅
良かったら一緒に五島旅に行かないかと、先輩からお誘いを受けた。都合がつけば旦那さんにも来てほしいし、無理なら一人でもとのこと。
お邪魔じゃないかなと一瞬思いかけたけど、今さらそんな間柄でもないなと思い直しみんなで日程を合わせる。
私も旦那さんも五島列島へは行ったことがなく、行ってみたいと話題にのぼったこともあった。
映画の一部も五島で撮られたが、さすがに出演もしていないのに見学したいとは言えなかった。
行ってみると、秋の五島は結構涼しかった。先生が空港に迎えに来てくれて、初日は五島の海の幸を堪能したり美しい教会たちを見て回った。
新しい建物とは違い、キリシタンの歴史を感じる荘厳な雰囲気があった。映画の1シーンとしてスクリーンで観るのもいいけど、実物は感動もひとしおだった。
翌日は別の島へと船で渡り、いざ世界遺産へ。
昨日見た教会とはまた全然造りも異なっていて、悲しくも力強い感じだった。
お昼は、地獄炊きという五島の名物うどんを食べた。先輩と私は、お店にいたおばあちゃんから
「みじょかね〜。」
と声を掛けられ、意味が分からなかったのでとりあえず会釈だけしておいた。
後で先生に聞くと、方言でかわいいという意味らしい。ありがとう。おばあちゃん。大好き。
最終日の朝、また別の教会へ。これもまた作りが違い、赤煉瓦で造られた教会だった。教会もさることながら、近くで売っていたマドレーヌが絶品でおみやげにたくさん買った。
そして最後に、鬼岳へとやってきた。
はじめまして。これが鬼岳なのね。小説の終わりの場面もここをモデルに描いたし、凧揚げのシーンもここ。厳つ目の名前とは裏腹に、何となく優しげな空気を感じた。
旦那さんも初めての五島をかなり気に入ったみたいで、また来たいねと言っていた。私もそう思う。
先輩たち二人はというと、手くらいは繋いでいたけど私たちの前でいちゃつくことはなかった。普段クールなお二人なだけに幸せオーラいっぱいになった今どうなるのかと思っていたけど、先生は先生で、先輩もいつも通りの先輩だった。
この旅行は、お二人からプレゼントしてもらった。出しますと言ったんだけど、これでも足りないからって押し切られ結局はお言葉に甘えた。映画のファンがいるなら、その人にとっては聖地巡礼のツアーだろうなと思う。
何よりのプレゼントは、幸せそうなお二人を見られたことだ。勝手に推して勝手に応援し、ここまでやってきた。推し活も、ここまできたら我ながら成功と呼べるだろう。
帰りの空港で、先輩と二人して椿のクリームを買った。
先輩、先生、これからも遊んでくださいね。
こうして、長いようであっという間の五島旅が終わった。




