第70話 父と母
二人して少し眠ってしまった。目を覚ますと、隣に彼がいる。心が満ちていくのを感じた。
少しして、彼も目を覚ます。
「ごめん。寝ちゃってた。」
「私も。明日もう帰らなきゃなんだよね?」
「それなんだけど折角だからあと1日休みもらって、もし明日お会いできるならお母さんと森に会えたらなと思うんだけどどうかな?」
「もちろん。二人に連絡してみるね。二人の都合合わなくても、明日も泊まってってくれる?」
「うん。勝手にそのつもりで職場に連絡入れちゃった。」
余り物を二人で調理し、簡単な食事を取っている間に返信があった。
「二人とも、明日いけるって。朝イチで実家寄ってから、早矢香ご夫妻とお昼食べる感じでいい?」
「俺は全然構わないよ。今さらだけど、二人で外歩いて大丈夫?なんか仕事に影響とか……。」
「大丈夫。事務所には報告したし、この年齢でそんなこと言ってきたらセクハラで訴える(笑)」
「良かった。あと、今度うちの両親とも会ってくれる?たぶんもう結婚しないって見限られてるから、今さら彼女紹介したら泡吹いちゃうかも(笑)」
「お会いしたいしするけど、ほんと申し訳無さ過ぎてずっと頭下げっぱなしかも。」
「じゃあ二人してずっと頭下げとくか。」
この12年ですっかり大人になった気でいたし彼も大人っぷりが上がっているけど、結局二人でいたら昔とおんなじように軽口を叩きあうのね私たち。そんな些細な気づきがうれしい。
翌朝、初めて二人で実家を訪ねる。
鍵を開けたら、音に反応してパタパタと駆けてくるお母さん。
「二人ともおかえりなさい。さ、上がって上がって。」
五島列島みやげだという高級そうなお菓子を仏壇に供え、手を合わせる彼。なんでも、過去に皇室にも献上されたことのある由緒正しいお菓子らしい。
目を閉じた彼を見ながら、男同士の会話があるんだろうな……。お父さんが生きていたら仲良くなったろうな……としみじみ思う。
お母さんはすべてを分かった様子で、ただ
「良かったね。」
と言ってくれた。
そして彼には、
「この子のこと、これからも離さないであげてね。」
と微笑みかけた。
私たちから、簡単に昨日のことを報告した。またあゆちゃんにはきちんとお礼しなきゃと、口々に言い合った。
実家を出て、次は早矢香のお家に向かう。結婚から5年、今は絶賛子育て中とのことで自宅にお呼ばれした。毎日バタバタだろうに、快くお招きいただいた。
実家からそう遠くない距離だったので、お昼前には着いた。二人で行くと伝えているから大体のことは伝わっていると思う。




