第65話 試写会
この日、私は映画の撮影現場に来ていた。映画にも何度か出演させてもらったことはあるけど見学というか応援というか、出演者ではない立場として来るのは初めての経験だ。
原作者として差し入れを持ってきたけど、何がいいのかさっぱり分からず定番だというフルーツジュースを振る舞った。
緊張していた私を、キャストの皆さんは温かく迎えてくれた。監督も出演者も素晴らしくて、いい作品になるぞという期待しかなかった。完成版を観るのが今から楽しみだ。
この日は、二人が再会した結婚式でのシーンの撮影だった。私自身、先輩からの話を元に書いたから実際の光景を見ているわけじゃない。
もちろん結婚式の会場だったホテルとは別の場所だけど、撮影セットを見て想像が膨らんだ。先輩役の女優さんと当時の先輩とが重なって、胸が熱くなった。
帰り道、マネージャーさんから、
「覚えてます?あのテレビ収録で徳山さんが西原先生をお呼びしていなかったら、さっきの光景は見れませんでしたね。
あれから連載が始まって、2年間休まず書き続けて小説になって、ついには映画化。ほんと、お二人ほどではないですが長い道のりでしたね。ちょっと早いけど、お疲れ様。」
と労ってもらった。
思えば、そのどの現場にもマネージャーさんがいて、側で支えてくれていた。マネージャーさんも、お疲れ様。私たちも、先輩たちに負けないくらいいいコンビですね。
撮影の状況は逐一報告をもらった。多少のスケジュールのズレはあったが、クランクアップまで概ね順調に進んだそうだ。そして、待ちに待った試写会の日が決定した。
先輩をお誘いしたが、
『別の仕事があるから開封日に観に行くね!』
と返信があった。
先生にも連絡してもらったけど、同じく都合がつかなかったみたい。お二人に観てもらうのは少し先になったが、私は出演者さんたちと一足先に鑑賞させてもらうことにした。
映画は、最高と表現して不足のない出来になっていた。原作から少し変わっていた部分もあったけど、全然気にならないというかむしろ良くなっていてさすがは監督さんだと思った。
展開は分かっているけれど、初めて映像として見るお二人を目の前に私は涙を堪えられなかった。改めて客観的な話として冷静にみると、自分がもし先輩の立場ならあんな風に笑っていられる自信はまるでない。
最後は前向きな感じで終われたのが唯一の救いだろうか。描き下ろしの部分も、ほぼイメージ通りに再現してくださっていた。
二人にも、早く観てもらいたい。ただただそう思った。




