第62話 凧揚げ
「前会ったのって3か月くらい前だっけ?結構久しぶりな感じするね。」
「そうですね。すっかり先輩不足なので、今日は充電しにきました。」
「またそんなこと言って。
何か話があるんじゃないの?最近忙しそうだったし。
旦那さんとは、順調?」
「そこはご心配なく。でも、さすがは先輩ご明察です。もう今や懐かしさすら覚えますけど、あの小説が実は映画化されることになりまして。」
「え、映画化?すごいじゃない!おめでとう!
頑張って書いてくれてたもんね。自分のことのようにうれしい。今度また、うちでお祝いしましょ。」
そう言って、心底うれしそうな笑顔を見せる先輩。
「いや、お二人のエピソードありきの話でしたしこちらこそ感謝してもしきれません。」
「いやー、あんな恥ずかしさ満載の話を素敵なエピソードに変えてくれて、これはもうあゆちゃんの文才でしかないよ。本当にありがとうね。」
描き下ろしの話があったけど、少しだけ構想というか追加で書きたいものがあった。
先生視点での7年間と先生が会いに来た話。先輩のお母様は内緒にされているみたいだったけど、もう時効ではないかと思っている。
先輩、読んだら実話だってすぐに気付くだろうな。驚くかな?察しがいい先輩のことだから薄々勘付いていて驚かないかな?いずれにしても、楽しく読んでくれますよね?
あとは、終わり方だけだ。先生とお母様との約束や先生が会いに来たこと、そのあたりを書くとどうしても終わりがハッピーエンドに向かってしまいそうだ。
でも、私は今回の描き下ろしでも二人の終わりをそんなふうに描くつもりはない。そこだけは、作者としての矜持というか譲れない部分だ。
さらに5年という歳月を経た今、二人はそれぞれへの思いを胸に別の道を歩んでいる。そんな風に連載での終わり方を踏襲しつつも、さらなる歩みを描けたらなと思う。
先輩のことは、この3年間も引き続き近くで見てきたからよく分かっている。
先生はどうなんだろうか?先生のことだからまたパワーアップしてるんだろうけど、そもそもまだ五島にいるんだろうか?
そんなことを考えていた矢先、マネージャーさんから、
『西原先生にもお伝えしました。最近はバラモン凧上げに熱中されているそうです。』
というメッセージとともに、1枚の写真が届いた。
鬼の絵が描かれた凧を子どもたちと上げる先生の姿が、そこにはあった。
高校生じゃ飽き足らず小さい子たちまで……。先生はほんと子どもが好きなんだな。そう感じる一枚だった。




