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第61話 最後の贈り物

 映画化か。なかなか実感が湧かなくて、とりあえずマネージャーさんに連絡する。

 卒業後も所属事務所は変わらなかったから、ずーっと同じマネージャーさんに担当してもらっている。有り難いことだ。


「あ、もしもし。はい。

 映画化のお話、さっき涼子さんから連絡がありました。まだ全然、実感湧かないですけど。」


「お二人にも、頃合いを見て連絡しますよね?

 西原先生には私の方から連絡しておきますね。」

 さすがだ。しごできマネージャー。


「ありがとうございます。先輩には、私から報告させてください。

 あと、数話分の描き下ろしが必要みたいなのでまた後日涼子さんが会社を訪ねてくださるそうです。そっちの方もよろしくお願いします。」


「もちろんです。映画化、楽しみですね。」


「はい!」

 マネージャーさんとも話したことでじわじわと、少しずつだが実感が湧いてくる。


 映画化、もちろんうれしい。好きな小説の映画を観に行ったり映画を観てから原作を読んだりするのは、昔から好きだった。

 ただ、うれしいよりも、もっと大きな感情が私の中に芽生えていた。


 これが、ほんとのほんとに最後の機会なのではないか?

 先輩と先生、あれから5年も経って心の整理もついてしまったかもしれない。私自身、応援すると言いながら一度は諦めてしまった。

 でももし、今回二人を引き合わせることができたなら……。そんな、一筋の希望の光を探してしまう。いやいや、せっかく整理がついたのにまた引っ掻き回してどうする。

 そんな両極端な思いを抱え、逡巡する。


 分からないのなら相談だ。あの頃と違って、もう私は一人じゃない。



 帰ってから旦那さんに報告すると、涼子さん以上のテンションで喜んでくれた。


 そして、私が二人のことを相談すると、

『映画のモデルとなるお二人なんでしょ?

 舞台挨拶には招待しないと、むしろ失礼だと思う。来る来ないはお二人に選んでもらえばいいんだし。

 意図してとかそんなんじゃなく、自然な感じでお誘いすればいいと思うよ。』

と、至極もっともな意見をもらった。


 そうだ。舞台挨拶。おそらく、この映画でもあることだろう。

 それが、その招待状が私が二人に渡せる最後の贈り物だ。



 涼子さんたち出版社に、配給会社も加えた打ち合わせもある程度進んだ段階でまだ世間的には公表されていなかったが先輩に連絡した。


 いまだに多くて月1とかでご飯に行っていたから、とりあえず普通にご飯をおねだりしてみる。

 いつも大体私が食べたいもの行きたい店を送ると、

『いつにする?』

と返事が来る。


 そういえば、先輩って好き嫌いないのかな?今更ながらそんなことを思った。

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