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第59話 誓い

「彼言ってたわ。今の自分、変ですよねって。でも、会えるかもしれないと思ったらチケット申し込んでたんだって。


 欲張ると上手くいかないのは分かってるのにって、芸能人との会い方なんて知らないのにって、そう言って笑ってた。なんだかその姿が、五島の話をするあの子に被ってしまって。


 五島の話は、あの子から聞いてるでしょ?おみやげも買ってたしね。私も椿のクリームをもらったわ。これを見つけて、あの子が五島に行ったこと夕くんも分かったみたいだった。」


「はい、いただきました。

 先生にとって、先輩に会える場所が舞台挨拶の場かここだったわけですね。

 二人とも、ほんと不器用。仕事中とはまるで別人みたい。」


「そうね。ほんと、誰に似たのかしら?」

 そう言って、お母様が仏壇に飾ってある写真に目を遣る。


「お父様ですね。ご挨拶しても構いませんか?」


「もちろん。きっと喜ぶわ。夕くんはいつもお供えを買ってきてくれるの。この前は、五島のお菓子をいただいたわ。」


 優しそうに笑う男性。目元の優しさが、先輩にとてもよく似ていた。

 この方が、先輩のお父様。静かに手を合わせる。


「そういえば、お父様のご両親は?」


「あー、お義父様とお義母様はまだお元気よ。毎年……というわけではないけれど、こちらにお見えになることは増えたかしら。あの子も、たまに電話してるみたいね。」


 そうだったんだ。

『良かったですね。』

写真の中のお父様に語りかける。



「今日は、わざわざ来てもらってありがとうね。それと今まで応援ありがとうございました。母親として、心から感謝します。あともうちょっとだと思うけど、連載の方も頑張って。」


「はい。頑張ります。終わったら、先輩と一緒に慰労会してください(笑)」



 帰り道、この2年間を振り返る。先ほどのおじいちゃんおばあちゃんの話が昔に感じるほど、色んな話を書いてきた。

 しんどいときもあったけど、おかげさまで反響はいい。まぁ、それはオリジナルのストーリーがいいからだけど。


 おそらく私の連載の中でも、二人は結ばれない。終わり方も大体は決めたから、今日伺った話は登場させない。

 だって、現実の方が小説より素敵でないとね。

 そうでしょ、先輩。そうだよね、先生。


 書き終わったとき、私はある種の達成感と力不足の両方を感じることだろう。

 でも、よくやったってみんな言ってくれるから。きっと言ってくれるからさ、そのときは私も思いっきり自画自賛しよう。そう、自分に誓った。

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