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第5話 自己紹介

「ホームルームを始めます。

 みんな自己紹介書いてきてくれてありがとう。何人かもらってない人いるけど、書けてなくてもいいから今出してもらえる?別に課題とかじゃなくてお願いだから、白紙でも構わないよ。」


 数名が、おそらく白紙であろう紙を出していく。


「さて、今日はこれを使って先生がみんなを紹介していきます。間違った説明してたら後で訂正だけよろしく。」


「先生。自己紹介なんだから自分らでやった方がはやくないですか?」


 折角いい流れなのに……と私は思った。自己紹介は昔から苦手なのだ。自慢もできないし自分を下げていうと変な感じになるし、何話していいか分からなくなる。


「まぁまぁ、先生頑張って覚えてきたんでやらせてほしいなー。」

 先生はそれだけ言って、みんなの紹介を始めた。納得いってない子もいるみたいだけど大丈夫かな。


「まずは赤井さんから。休みの日は〜。」

 次々に、みんなの休日の過ごし方と一生のうちにやり遂げたいことを紹介していく先生。

 結論から言うと、先生の紹介はお世辞抜きでおもしろかった。一見普通に思えるがちょっと変わっていて、それのせいか先生の話は面白かった。


 たとえば『人生で一度は旅行に行ってみたいです。』と書いた大人しそうな子。

「めちゃくちゃ素敵じゃない?みんなおすすめの旅行先とかある?」

と言って、周りの子に質問していく。

 クラスの雰囲気も少しずつ温まっていき、さらに、「一人で行きたい?それとも誰かと行きたい?」

と尋ねる先生。


「一人だとインドアだから、誰かと行けたらいいなーって。」

「この中に将来一緒に初旅行へ行く子がいるかもしれないね。旅行したことある人、ぜひ色々教えてあげて。」


 たとえば『休みの日マジでないです。部活です。助けてください。顧問は鬼です。』と書いたお調子者。

 その子に対しては、

「辞めるときは言ってください。一緒に鬼退治に行きましょう。」

と。


 たとえば白紙で出した子には、

「完全に不良です。皆さん付き合うのはやめましょう。」

と言い放った。

 そんな冗談も真面目な顔で言うから余計に面白く、私の心配は他所に紹介はつつがなく進んでいった。


 ちなみに私はというと、出す直前に隣の子に唆されたこともあって、『アイドルになる。』という小さい頃からの夢を正直に書いてみた。

 絶対茶化されると思ったが、先生は真っ直ぐに私の目を見て、

「徳山さんならなれるよ。」

と言い、そしてすぐさまニコッとすると、

「一回もしゃべったことないやつに言われてもって感じだよね。」

と続けた。


 一通り紹介を終えると、

「まだちょっと時間残ってるけど、あとは若い人たちにまかせます。」

とだけ言い残し去っていった。


「すごいイジられてたじゃん、ダッサー。」

 若人たちが各所で盛り上がっている。


 みんなのこともちょっと知れたし、自己紹介しなくて済んで良かった。

 それでいいんだけど、ふと最初の『なんで自分たちで自己紹介しちゃダメなのか」という疑問が気になった。結果おもしろかったし言った子もその後はそんな気にしていない様子だったけど。

 その疑問は、最後まで解消されることはなかった。

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