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第58話 応援仲間

 本当は、私のせいで止まっていた時間が動き出し、余計に傷付ける結果になってしまったことを謝りたかった。けど、やめた。

 そんなことを言ったら、先輩は優しい人だからもっと傷付くかもしれないし、今さらそんなことを言っても、進んだ時間も再度止まってしまった時間も元には戻らない。


 たぶんこの終わりは、私の小説の終わりは現実よりもちょっと救いがない。

 前向きな風には書いたけれど、先生の先輩に対する想いはあえて書かなかった。



『あの子と夕くんとのことでお話したいことがあるの。よかったら、一度お話できない?』

 先輩のお母様から連絡をもらったのは、数か月前のこと。


 先輩のご実家にお邪魔するのは、これで二度目だ。今回は先輩がいないから何だかちょっと変な感じがする。


「いらっしゃい。突然連絡してごめんなさいね。どうしても、あなたにお伝えしたいことがあって。

 その前に、二人のことを応援してくれてありがとうございました。連載も、いつも楽しく拝見しているわ。」


 これが育ちというやつなのか。お母様の優美な所作が、先輩のそれと重なる。


「いいえ。ぜんっぜんお役に立てなくて……。

 お二人の恋の成就を請け負ったなんて、そんなことを思った時もありましたけど、傲慢でした。」


「そんなことないわ。あの子も、早矢香さん以外の共通の知り合いができたって喜んでいたし、応援も嬉しかったはず。

 今日来てもらったのはね、先に二人の恋を応援してた者から感謝を伝えたいなと思って。」


 そこで初めて、お母様と先生が交わした約束の存在を知った。先輩を忘れない、という約束。


 前に来た時いないはずの先生がすぐそこで微笑んでいる気がしたけど、あながち間違いではなかったのかも。


 先生、ほんとに時々訪れていたんだね、この部屋。何だかしみじみとした気分になった。目を閉じれば、そこで先輩の話をするお母様と先生の姿が浮かんでくる。


「これは別に小説に書いてほしいわけではなくて、ただ伝えておきたいの。

 一緒に応援してきてくれたあなたに。手みやげに、彼が持ってくるのと全く同じ羊羹をチョイスしたあなたに。」


 そう言って、お母様は話し続ける。

「つい先日、彼が何年かぶりにふらっとやって来たの。いつもはかなり前に連絡をくれるんだけど、その時は前日で、ちょっと珍しいなって。

 何でも、あの子の映画の舞台挨拶が六本木であってそれを観てきたんだそう。」

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