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第52話 止まっていた時間

 ブーッ。

 二次会の真っ最中にも関わらず、彼からはすぐに返信があった。


『さっきは話せてうれしかった!こっち来る日、決まったらまた教えてください。』


 別れたあの日から止まっていたライン。実に7年以上振りに、新しいメッセージが交わされた。

 止まっていた二人の時間が動き出したような、別々に動いていた時間が合わさったような、そんな感覚だった。



 そこからは、毎日がふわふわした感覚だった。付き合っていたときはこんな感覚だったろうか?付き合いてたの感じかな?

 色々考えを巡らせるが、どれもしっくりこなかった。それだけ、この7年間で彼への思いは膨らんでいたのかもしれない。


 旅行とはいえ遠路はるばる会いに行くわけだから、自分の中ではかなり大きな一歩だけど、でもまだ会う約束をしただけだし周りの人には言えなかった。

 マネージャーさんにも、きっかけをくれた早矢香にも、そしてお母さんにも。


 母はたぶん本当は色々思うところがあるんだろうけど、何も言ってこない。彼と別れてから母は私の恋愛に口を出さなくなったし、もちろん彼の話も一切しなかった。

 期待させてもしまた失敗しちゃったらと思うと、みんなにはとてもじゃないけど言えなかった。



 芸能界も、一般社会とかけ離れた世界とはいえ夏休み文化はある。私も毎年もらっているが今年もまとまった日数を取れることになり、それを使って五島旅を決行することにした。

 先生という職業柄、彼も子どもたちの休み期間は休暇が取りやすいはずだ。


 楽しみ過ぎて、いつ以来か分からないほど久しぶりにガイドブックなんて買っちゃって。それを参考に軽く予定を立て、彼に送った。

 彼からは、翌朝返信があった。送られてきたのは、私が立てた予定をもとに彼が作った旅行のプランだった。

 付き合っていた頃彼と何度か旅行したが、いつも計画は彼が立ててくれていた。旅行のプランナーになっても絶対食べていけるよってほど、彼は計画を立てるのが上手だった。

 そんなことを思い出しながら、懐かしい気分で旅程を眺める。


 福岡に前乗りし、五島での滞在は二泊三日を予定している。彼は福江島という、列島で一番大きな島に住んでいるらしい。

 福江島からジェットフォイルという船で渡った先に、世界遺産にも登録された教会がある。私はその教会に一番興味を惹かれた。せっかく五島列島を訪れるなら、キリシタンの悲しくも強い思いの詰まった場所に是非とも行ってみたい。

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