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第49話 結婚式

「この度は、誠におめでとうございます。

 早矢香、最高にきれいよ。ドレス本当によく似合っているわ。」


 新婦の控え室で、ご家族に挨拶をしつつ本日の主役に声を掛ける。

 式は東京の人気ホテルで、平日とはいえよく予約が取れたものだと思った。予報では雨の心配もあったけど、当日は穏やかな晴れ模様で、二人の門出にふさわしい本当に良き日となった。


「ありがとう。忙しいのに来てくれてすっごくうれしい。」


 新郎新婦はただでさえ準備で忙しいのに来客対応までしていたら大変だろうと思い、二言三言だけ交わし、

「じゃあ、後で式場で。」

と言ってそそくさと部屋を後にしようとした。



 トントン。

ノック音の少し後に扉が開き、夕の姿が目に飛び込んでくる。


 たぶん、お互い目を丸くしていたと思う。

今日顔を合わせるであろうことは分かっていたけど、心の準備は、結局その瞬間までできていなかった。


 あゆちゃんに背中を押してもらったあの日からどうやって声を掛けようか何度も頭の中でイメージしてみたけど、脳内ですら一度も上手くいかなかった。


「あ……。」

 やばい。やっぱり、言葉が出てこない。


「すごい!宮手 えりかさん、本物だ!サインとか……って失礼か。すみません。」


 テンパっていたところ、彼の隣の人に声を掛けられた。後輩さんだろうか。何だか良さそうな人だ。彼のおかげで何とか話すことができた。

「後で書くものさえあれば、全然いいですよ。」


「マジですか?やったー!夕さんも、こんなチャンス滅多にないですよ!」


 視線を夕の方に戻す。

「いや、俺はいいや。サイン貰ったら、何か遠く離れていっちゃうような気がするから。」

 遠い目をしたと思ったら、彼は軽く微笑んで通り過ぎていった。


 今のはどういう意味?ねぇ、教えてよ。私は混乱した頭を抱えたまま、式場へと向かった。



「せんぱーい!」

「いつも見てます!」

「相変わらずきれいですね!」

「たまには会ってくださいよ!」


 もうみんな結構集まっていたみたいで、会場に入るやいなや取り囲まれる。

 懐かしい顔ぶれも多くて少し元気を取り戻した。


 彼も挨拶を終えたらしく、遠くの方に座るのが見えた。こんなにも近くにいるのに、取り巻きの向こうにいる彼が遠く遠く感じた。

 声掛けしなきゃという自分へのプレッシャーも、距離感に拍車をかけている気がする。

 少しくらい、こっち向いてくれたっていいのに。内心で気持ち毒づいた。



 間もなくして、式が始まった。さすがは大人気のホテルといったところで、何の滞りもなく進んでいく。

 結婚式にはこれまで何度も出席させてもらったけど、指輪の交換とおなじみの宣誓がやっぱりグッとくる。

 家族や友人からのメッセージやケーキ入刀ももちろん素敵だけど、前の2つはお互いの未来に向けての行動だからか、一番感動する。


 あたたかな式が終わり、お決まりのブーケトス。今の私たちの距離感を嘲笑うかのように、全く違う方向へと飛んでいくブーケ。

 私が彼主演の恋愛映画のヒロインなら飛んできたかもなぁ。なーんて、期待してるのがダメなんだろうな。ラブストーリーのヒロインは、そういうの意識してない感じするもん。

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