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第48話 勇気

 初めてのお宅訪問以来、連載の話をするときは、まぁ別にお店の個室やカラオケとかでも良かったのだが、何となく話しにくいのもありお互いの家を行き来していた。


 今日は私の家で、最近書いた原稿を見てもらったり追加で過去の出来事をお聞きしたりした。大体どちらの家でも、こんな風に過ごして夕方解散することが多かった。結構次の日朝早くから仕事……という場合が多いからだ。


「そういえば、この間初デートのエピソードで話した、食堂で勤めてた友だちの結婚式が来月にあるから出席してくるわ。」


「わー!おめでとうございます!早矢香さん……ですよね。お相手の方もご存知なんですか?場所はどちらで?」


「相手の子も同じ大学でね。ちょっとだけしか話したことはないけど。学生の頃の後輩で長いこと付き合っていたから、ようやく結婚かーって感じで私もうれしい。

 場所は東京だから都合もつきやすいし。」


「早矢香さんの結婚式ってことは、先生も来られるんですよね?」


「招待はしたって聞いたわ。まぁ、私を避けて来ないなんてそんな不義理な人じゃないし。それにあの二人、今でも仲がいいし。ちょっと来るまでが遠いけどね(笑)」



 そっか。また会う機会があるんだ。それならなおのこと、あのことを先輩に伝えなくっちゃ。

 私は真剣な眼差しを先輩に向ける。

「先輩、次会ったら伝えたいと思っていたことがありまして……。」


「なぁに?そんな改まって。緊張しちゃうじゃない。」


「私、この前夢をみたんです。高校時代の夢でした。

 それで、ある日のホームルームで先生が言っていたことを思い出したんです。

 先生は約束を破る人が嫌いだったって言ってました。破られた側が傷付くからって。」


「ほらね。たぶん今も変わってないわよ。人はそう簡単には変われないし、大人ならなおさらね。」


「でも!こうも言ってました。

 好きで約束を破る人なんて、ほとんどいないって。前までの自分はそれにこだわりすぎて、人が離れていってしまったって。みんなはそんなことにならないようにって。


 先生は、きっと後悔しているはずです。でもたぶん先輩に彼氏がいると思っていて、声掛けられないはずです。

 これを逃したら、次もう会う機会なんてないかもしれないですよ?先輩、勇気出してください!」



 あゆちゃんの眼差しを、真正面から受け止める。

「でも、意外と彼ももう幸せになっているかもしれないし、それに時間が経ちすぎているわ。」


「そうですよ!時間経ちすぎです!

 だから、一刻も早く言わなきゃです!」


「でも、素敵な彼女がいるかもしれないし。」


「先輩、さっきから『でも』しか言ってないですよ。

 だったら『今、彼女はいるの?』って、そう聞けばいいんですよ。それだけでも、お二人の間に何らかの変化が起きるはずです。

 もし『いるよ』って言われたら、私が全力で受け止めます。」


 なるほど。思わず納得してしまった。大人の恋愛が難しいのは、こういうところなんだろうな。色々考えすぎてしまう。まぁ私の場合は、若くても難しいんだろうけど。


「分かった。言えたらね。頑張ってみる。」

 あゆちゃんの勢いに気圧されるまま、そう応えた。

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