第41話 臆病
「どう?呆れちゃった?あっけなかったでしょ。
私も未だに夢なんじゃないかって思うくらい、たった1日ですべてが終わっちゃった。私たちも未熟で、感情のコントロールができなかったのよね。」
会えない中での、また芸能人と交際する中での互いの嫉妬。約束に対する考え方の違い、吐露された本音の受け止め方……噛み合っていた歯車の色んな部分で一瞬にしてズレが生じてしまったのだ。
おそらくそれは、その日急におかしくなったのではなく付き合っていくうちにちょっとずつ生じたズレだったのだろう。
でもそういったズレは、年々肥大してきた歪みは、結果的に破局するカップルだけでなく結婚に至るカップルでさえ抱えているものではないのか。
私は、とても悲しい気持ちになった。まだ事務所によって親の反対によって、病や事故によって……そんな自分たちの力ではどうしようもない理由なら、納得できたのかもしれない。私が納得するかどうかは、どうでもいいのだけれど。
でも二人は、お互いの努力でずっとバランスを取っていて幸せな結末を迎えるはずだったのに、星加さんという先輩の女優仲間であった人のムーブによって、結果その道を選んだのが先輩たち自身であったとしても、崩されてしまったことが悲しかった。
もちろん星加さんが悪いとかではないんだけど、もしそこに私がいたのなら、『えりかさん、八木さんの相談に乗ってきてあげてください。』『芸能人の先輩に頼るなんて、きっとかなりの勇気を振り絞ったはずですよ。』って、そう言いたかった。
「言葉も出ないよね。何か、ドラマにもならないようなありきたりというか馬鹿みたいな別れ方でごめんね。」
私は悲しい感情でいっぱいで言葉が出てこず、
「そんなことないです。」
の一言を絞り出すのがやっとだった。
「その日以来、ほんと会うことは一度もなくて。連絡するとか謝りに行くとか、結果はどうであれしなきゃいけないことはたくさんあったと思う。
でも、私ダメね。一度失ってしまった相手を取り戻すのって、どうしても、昔から苦手なのよね。勇気が出ないというか、自分ではどうしようもないの。
それで、全く会わない7年間を経て、再会したのがあの収録の日ってわけ。」
「今からでも、連絡したり会いに行ったりはしないんですか?」
「連絡先は変わっているかもしれないし、夕はSNSもしない人だったから。五島にいることは分かったけど、住所も勤め先も知らないし……。
って、こういうところなのよね。たぶん学校だってそんな多くはないから、探そうと思えば探せるだろうし、芸能人の力を使えばわりと簡単に住んでるところも大体分かっちゃうと思う。
でもさっきも言ったけど、勇気が出ないの。拒絶されたらどうしよう、もう最愛の人を見つけていたらどうしようって。
きれいとは言えないけど、美化された思い出の中で生きていた方がよく思われるのかもって。」




