第39話 鉛の子
「そんな煮えきらない思いは抱えつつも、相談を聞くため久しぶりに三人で会うことになった。」
頭の中で、呼び起こしたくないあの日の記憶が蘇る。
約束の日、その日私はドラマの撮影があって朝早くから現場に出ていた。撮影は少し押して終わり、夕方頃に控え室で『今から打ち上げに行かない?』と声をかけられた。
夜は先約があるからと断ろうとした私は、当時現場が一緒になることが多かった女優仲間-星加 舞に怒られた。
「◯◯さんも来るんだって!あの人あんまり打ち上げとか来ないから、こんなチャンス滅多にこないよ!
何の約束か知らないけどえりか来なよ!スターと飲めるせっかくの機会よ!」
「でも……。」
と、私は後輩との約束があることを話した。彼がいることは前から話していたし、それなら仕方ないねってなると思ってた。
でも星加さんは、
「その子たちとはいつでも会えるじゃん。それに、えりか最近彼とギスギスしてるんでしょ?それならさ、今日は頑張ったんだしご褒美だと思ってパーッといこうよ。私、参加って言ってきてあげる。」
と言った。
駆けていく彼女を、私は止めることができなかった。いや正確には、止められたけど止めなかったのだ。
3人のグループラインに、急きょ打ち上げすることになって断りにくいこと、後日にずらしてほしいこと、最後に謝罪の意を込めたメッセージを送ってから打ち上げへと向かった。
打ち上げは終始楽しく、ずっと第一線で活躍されているスター俳優さんにも話しかけてもらい心が躍った。楽しい時間は、彼との最近のことを忘れさせてくれた。
打ち上げが終わってラインを見ると、まずグループラインには八木ちゃんから、『お忙しいところ、無理を言ってすみませんでした。何とか自力で頑張ってみます。ありがとうございました。』とメッセージが入っていた。
『いつでも会えるじゃん。』
そんなことはない。日程的には会えるかもしれないけど、私はその日八木ちゃんからの信頼を失ったんだと思う。
夕からは個別ラインに、『打ち上げ、大変だね。』と入っていた。普段なら、お疲れの一言が添えられていたと思う。彼なりに気持ちを鎮めて送ったんであろうことが見て取れた。
私は、それら2つのメッセージを見た直後、言葉では表現できない感情に襲われた。そしてその感情に押し潰されそうで、彼にこう送った。
数日置いて冷静に話していたら、また違った未来が待っていただろうか。
『今から会えない?』
『いいよ。』
彼からは、すぐに返信があった。
それから私たちは、よく待ち合わせをする駅で合流し個室がある居酒屋さんに入った。
顔も売れていたので街を歩くときはマスクか眼鏡が必須だったし、彼とも、家で会ったり個室のお店で会ったりが多くなっていた。




