第3話 楽屋挨拶
春休み期間の方が一般の方が出演しやすいということもあり、あっという間に収録日を迎えた。学校の先生なら特にそうかもしれない。
トントン。
「失礼します。」
今回番組にはドラマの宣伝も兼ねて出演させてもらうのだが、そのドラマの主演で事務所の先輩でもある宮手えりかさんへの楽屋挨拶。
「先輩、今日はよろしくお願いします!」
「いらっしゃい。こちらこそよろしくね。ドラマの撮影、改めてお疲れ様でした。
今日は高校の恩師に会えるかもしれないんでしょ?緊張してる?」
これまで挨拶程度できれいな人だなーくらいの印象だった女優さん。今回初めて共演させてもらったが、演者スタッフ関係なく気さくで自信たっぷりで、それでいてなんだかちょっと陰のある宮手さんが大好きになった。
「緊張してますけど、まだ会えるかは分からないので……。」
「絶対会えるよー!応援してるね。」
「ありがとうございます。番組も、盛り上げられるように頑張ります!」
「頑張ろうね。
そうだ。打ち上げとかはあったけど二人で話す機会はあまりなかったし、今度ぜひご飯行こ。お姉さんのおごりで。」
「えーー!うれしいですとっても。また空いてる日連絡しますね。」
「徳山さん入られまーす。」
憧れの先輩にご飯誘ってもらって、これで先生に会えたら今日は誕生日以上かも。なんて気楽な気持ちでスタジオに入った。
「本日はどうぞよろしくお願いします。」
ADさんやプロデューサーさんに一礼し席につく。
芸人さんの進行で、オープニングトーク、他の出演者さんの会いたい人紹介や来られなかった人の手紙披露などが続いていく。
いよいよ、私の番がきた。
「続いては、徳山愛弓さんの『もう一度会いたい人』です。」
と言って、アナウンサーさんが先生と過ごした高校2年生の頃のエピソードを紹介する。
「先生との一番の思い出は何ですか?」
「先生とは別に二人でよく話したとか悩みを聞いてもらったとか、そういうのはなかったですし、部活の顧問でもなかったですが、高校2年生のときの担任で毎週ホームルームでしてくれる色んな話を聞くのが大好きでした。
ちょっと大げさに聞こえるかもですけど、私にとっては宝物のような時間でした。」
「ホームルームっていうと、なんか連絡事項があってみたいなイメージが強いけど、そんなんとはまた別で?覚えてる話何かありますか?」
「たしかにホームルームの大半はそういった時間でしたけど、連絡みたいなのをタブレットとかで送るようになって時間が余るので、残った時間どうしようかーみたいな感じでフリートークしてくれてました。」
当時の話をすると、今でもあの頃の記憶が鮮明に蘇る。