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第36話 第1話

「いやー、緊張したー。」


 すごく勉強になったしやる気も湧いたけど、プロの『本気』に触れたときはいつもやっぱり独特の緊張感がある。

 次の現場へと向かうマネージャーさんの車に揺られていくうちに、段々と解れてきた。珍しく、誰かに慰めてもらいたい気分だった。


「お疲れ様でした。私も読んでいたんですけど、普段あまり本は読まなくて……。いいアドバイスができずすみません。」


「全然全然。それは夏井さんたちがやってくださることだし。

 マネージャーさんには、お二人が身バレしないかとか事務所的にNGなものがないかとかそういうののチェックをお願いしたいので。」


 コマーシャルの関係上、たとえば二人がデートで麺類を食べに行ったとしてもそれは別のものに変える必要がある。カップ麺のスポンサーが付いているからだ。

 そういう認識できているものもあるけど、何分メンバーが多いから個人個人がしている仕事を全部把握して制約をかいくぐった原稿に仕上げることは、私一人では絶対に不可能だ。



 次の1週間はライブのリハーサルや収録などで多忙を極めたが、移動中や休憩といった隙間時間を使い改めて第1話をしたためた。

 休憩中に書いている時なんかは睡魔とのたたかいで、しばしば頭がカクンとなった。最初は笑っていたメンバーも途中からは、落ちそうなスマホを救出してくれたり紅茶を淹れてくれたり、みんな協力してくれた。早いペースで仕上げられたのは、そのおかげもかなりあった。



「細かい修正は入ると思いますが、概ねこの内容でいきましょう!」

 翌週、再度夏井さんに見てもらいOKサインをいただいた。何だか疲れがどっと出てきて、1話目でこんなんなってたら先が思いやられるなと思った。


 そんな心の内を見透かしたかのように、夏井さんからこんな言葉を頂いた。


「第1話って、ちょっと特別な感じがすると思いませんか?ほら、やっぱりそこで面白くないって判断されたら続きは読んですらもらえないですし。

 現に人気作品で、第1話が異様に長いものもありますし。長い話数の中でも1話目と最終話、まぁ最終話はとりわけそうですけど、双璧をなす存在だと思います。

 もう一つの『璧』に向かって、これから頑張っていきましょうね。」


 その後細かな指摘箇所を手入れし、第1話が完成した。



 そしてそれからも、アイドル活動のスケジュールと原稿の締め切りとのせめぎ合いで、なかなかハードな日々が続くこととなった。

 でも夏井さんに言われたように、2話目以降は最初ほどのしんどさは感じなかった。少しずつではあるが、体も今の生活に慣れてきたのかもしれない。

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