第35話 プロの仕事
「だからこれでもかっていう工夫を、それも人と違う工夫を凝らすんです。初めてなことも、本業の方がお忙しくてあまり時間をかけられないことも承知しています。
ですがせっかくこうして一緒にお仕事ができるんですから、私たちが心の底から愛せる作品にしませんか?そうすればきっと、この作品のモデルとなった人たちも読み終わったとき喜んでくれるはずです。」
夏井さんは最後に、
「生意気を言ってすみません。」
と言って頭を下げた。
アイドルになって、ライブに撮影、色んなことを経験させてもらった。その中で、これぞプロフェッショナルという人にこれまで何度かお会いしてきた。
分野は違えど自分の仕事に精通していて、それでいて満足することなく常に最善を探求し、そしてそんなみなさんは誰一人として決して偉そうにしなかった。
心の何処かでアイドルだからとかプロの作家さんには遠く及ばないとか、諦めというか甘えというかそういう感情を抱いていた。
でも目の前のプロの方が、私に全力でぶつかってきてくれている。オファーを受けたのだから、精一杯やろう。アイドルではなく小説家の卵として、真摯に取り組もう。心を入れかえよう。
「こちらこそ、申し訳ありませんでした。
ご迷惑たくさんおかけしますが、アイドル活動と同じだけのエネルギーをこの作品に注いでみせます。ですので、これからご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。」
私も頭を下げる。
「はい!」
と言ってくれた夏井さんの笑顔は、とても眩しかった。
それから、具体的な修正について話し合った。
「軽くお話を伺った感じでいうと結構な年月を経て再会するみたいな感じかと思うので、あくまで今を起点に過去を振り返る構成がいいかなと。
そうすることで、後悔のような感情を込めて過去の出来事について語れます。時系列で書いていって何年後……また何年後……とするより、二人が歩んだ時間を長く感じさせる効果が生まれます。」
その後も細かな指摘をもらい、どれもなるほどーと思うものばかりだった。やっぱり、読むのと実際に書くのとでは180度といっていいくらい違うんだなと思った。
「今日はありがとうございました。次回ご提出いただく原稿、楽しみにしていますね。
でも、徳山さんが小説好きで助かりました。普段読まれない方には、読者の気持ち……なんて言っても伝わらないですから。」
小説好きも、少しは講じていたみたい。良かった。
「はい。できるだけすぐに直しますので、またよろしくお願いします。」




