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第34話 提出

 その後もう少し、出会いから告白に至るまでの話をお聞きした。お昼過ぎに伺ったのだが、そうこうしている内に気付けば日も暮れそうな空模様。


「何か、エピソードの足しになりそうなものはあった?大したお構いもできずごめんなさいね。」


 帰り際、少しお出かけされていたお母様も帰ってこられており挨拶をする。

「遅くまでお邪魔しました。とりあえず第1話こんな風に書いてみようかなというのは固まったので、帰ってから早速整理してみようと思います。」


「えらいわね。お休みの日なのに。

 体には気をつけてね。応援しているから。」


 えりか先輩も、やさしい言葉をかけてくださる。

「私も、連載始まるの楽しみにしてるね。またいつでも連絡頂戴。こっちからもまたするけどね。」


 温かい気持ちに包まれつつ、この空間に先生もいたんだとしみじみ思った。一瞬、いないはずの先生がすぐそこで微笑んでいるような気がした。



 第1話は、お二人の出会いのシーンを書くことにした。お聞きしたエピソードをちょっと変えながら自分なりに書いていったら結構筆が進み、一旦書き終えることができた。

 もしかして私って才能あるのかも?と、プロの小説家さんが聞いたら真剣に怒られそうなことをちょっぴり思ってしまった。



 数日かけて手直ししてマネージャーさんにも読んでもらい、いざ夏井さんに見てもらう日がやってきた。

 これまでの打ち合わせは出版社まで出向いていたが、今後は基本的に私の事務所まで来てくださるそうで、申し訳ないけどスケジュールを考えるとだいぶ有り難い。


「こちら、第1話書いてきました。よろしくお願いします。」

 数日前まで調子に乗っていた私も、いざプロを目の前にすると一気に緊張する。


「拝読します。」

 そう言って、早速読み始める夏井さん。


 あっという間に読み終わり、第一声で、

「出会いの描写としては、よく書けていると思います。」

と、笑顔で言われた。


 ホッとしたのも束の間、

「ただ第1話としては、もっとキャッチーな始まり方がいいかなって思うんです。

 徳山さんは小説や映画がお好きだと仰っていましたが、冒頭がこのお話だったとして、続きを読みたい!観たい!っていう風に思いますか?」


 そんなこと、全く考えていなかった。自分がどう書くのかばかりが頭にあって、指摘されたとおり読者の目線には立てていなかった。


「いえ……。思わないかもしれないです。」


「今回は最初から連載が決まっているので、よっぽどのことがなければ最後まで書くことができます。

 でも、小説家さん漫画家さん脚本家さん。ジャンルに限らず、そういった方々はいつも必死で受け手の心を掴みにいきます。

 それができないと、いつでも連載が打ち切られてしまうからです。そしてその作品は、世の中から永遠に消えてしまいます。」

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