第31話 夏井さんと沖さん
「いただいたお話、お受けしようと思います。」
そうお伝えすると、お二人は突然立ち上がり抱き合った。
びっくりしたけど、私が断ると思われていたのかな?と思い直した。
そして夏井さんから手を握られ、
「ほんと?ほんとのほんと?」
と涙目で詰め寄られた。
私が困りながら、
「はい」
って連呼していると、隣にいたマネージャーさんが小さく咳払いした。
ハッとなった夏井さんは、謝りながらも
「ブログを拝見して以来、二人とも徳山さんにすっかりハマりまして。一緒に仕事するのが夢だったんですよ〜。」
と言って、興奮冷めやらぬ様子だった。
かなりの圧に気後れはしつつも、オファーいただいたことへの感謝とこれからよろしくお願いしますという思いを伝えた。
そして編集長の沖さんから、
「改めて、今回の連載を担当させていただく夏井と、この雑誌の編集長をしております沖です。」
と、再度自己紹介をしていただいた。
「それで、徳山さんは何か書いてみたい題材とかおありですか?
初めてでしょうしこちらの方でもいくつか案というか、書きやすそうなテーマを考えてはみたんですが。」
と、資料を見せていただく。
一通り目を通した後、
「あの、色々すでにご準備いただいていて申し訳ないんですが実は書きたい題材というか、物語があるんです。内容はまだ断片的というか、全然粗々なんですが。」
すると夏井さんは説明資料をさっと下げ、
「初めてでもう題材があるなんて、素敵すぎます!逆の意味で編集者泣かせです!」
と言って、目をキラキラさせた。
「そんな、ご期待に沿える内容かは自信がないですが……。」
そう言って、事前にマネージャーさんと打ち合わせした内容を説明した。知り合いの恋愛をオマージュしたもので、アイドル出身のタレントと、その同級生で予備校講師になった彼とのラブストーリー。
舞台や細かな設定、名前などは全て変えて、マネージャーさんや先輩にも見てもらった内容だ。
夏井さんたちはめちゃくちゃ真剣な表情で聞いてくださっていて、途中で一切口を挟まれることもなく逆に緊張した。
説明を終えると、
「これでいきましょうか。」「これでいこうか。」
と、二人の言葉がハモる。
「細かなところとか話の展開とかはまた書き進めながら詰めていくとして、大まかなプロット……というか構成は、こんな感じでいいと思います。映像化しても面白いくらいのストーリー性で、情景も浮かぶし、好きな作品になりそうです。」
そんな風に褒めていただいて、身が縮こまる思いがした。それと同時に、先輩と先生のお話が他の人にもいいなと思ってもらえた気がして、まるで自分のことのようにうれしく感じた。
「そんな風に甘やかされると調子に乗ってしまうので、厳しくご指導ください。どうかよろしくお願いします。」
その後はまた細かな打ち合わせ。具体的には、第1話の提出についてなどをお話しし出版社を後にした。




