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第25話 私の誕生日、父の命日

『もう二人とも帰ったよ。下降りるね。』


 家を出る前に、母に一言かける。


「上がってもらったら?どうせもう終電ないんじゃないの?お二人泊まられるかなーと思って、ちょうど布団用意してたのよ。近所のホテル取ってらっしゃったみたいだけど。

 それに、私も一目見てみたいし。」


 最後のが本音じゃないか。

 迷ったけど、たしかにこのまま帰すのも忍びなかったので、彼に電話した。


「もしもし。あの、お母さんがね、上がってもらったら?って言ってて。どうかな?」


「分かった。じゃあ挨拶だけしてすぐにお暇するよ。」



 ピンポーン

 母に恋人を紹介するのは初めてだから、なんかそわそわする。でも事前に分かっていたらもっと緊張していたに違いない。


「いらっしゃい。遅くにごめんなさいね。えりかの母です。さ、上がって上がって。」


「こちらこそ、夜分遅くに失礼します。えりかさんとお付き合いさせていただいています、西原 夕といいます。今日はどうしてもプレゼントが渡したくて来ただけなので、こちらで失礼させてもらいます。」


「えりかから話は聞いています。娘を大切にしてくれて、どうもありがとう。自慢の娘だから、これからも大事にしてあげてね。」

 お母さん、また恥ずかしいことを。

「今日はどこか泊まるあてはあるの?」


「お母様の前で恐縮ですが、自分にとっても自慢の彼女です。愛想尽かされないよう精進します。今日は駅前の漫画喫茶に泊まるので、お気遣い無用です。」


「なんか、見たことないくらい緊張してるんだけど。なんかおもしろい。」

 夕の知られざる一面だ。


「第一印象で失敗したくないから、邪魔しないで。」

 普段余裕たっぷりの彼の意外な姿が見られて、お母さんグッジョブ!と思った。


「邪魔だなんて、本日の主役に向かってひどいわ。」


「ひどいのは20歳になったばかりの誰かさんです。って、これを渡しにきたんだ。受け取ってほしいな。」


「ありがとう。開けてもいい?」


「いや、恥ずかしいから帰ってから開けて。じゃあ本当にお暇するから。」

 そう言って帰ろうとする彼を、母が呼び止める。


「夕くんってお呼びしてもいいかな?」


「はい。お好きなように呼んでください。」


「今日はね、えりかちゃんの誕生日なの。それは知ってくれてると思うんだけど、明日は夫、つまりえりかの父親の命日なの。

 だから、それもあってお義父さんお義母さんがお見えになったの。お墓はお住まいの近くにあるんだけど、納骨がまだで、仏壇のところにあるのよ。まだ若かったからね。私が死ぬとき、一緒に埋めてもらおうと思って。」

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