第24話 20歳の私
「ごめん。すぐかけ直すね。」
それだけ言って、母からの言葉を待たずに電話を切る。
プルプル。間髪入れず彼へとコールする。
「もしもし。レッスン終わった?」
いつもの落ち着いた声がする。
「うん。今終わったとこ。それでね、今お母さんから電話があって……。」
私はざっくりと事情を説明する。
「……っていう感じなんだけど、どうしたらいいかな?私。」
てめぇで選べよと言われるような内容だったけど、彼はそんなこと思わないっていう甘えがあった。彼は、いつも私の甘えを受け止めてくれる。
「おじいちゃんおばあちゃんに会ったら良いと思うよ。
でも、できたら俺にも会ってほしいなー。お二人とも12時までは起きてないよね?だったら、12時前にお家の前で会えない?一瞬でいいから。」
「悪いよそれは。夕、帰れないじゃん。」
「いや、それはネカフェにでも泊まるからさ。20歳になったえりかに、ちょっとでも早く会いたい。わがままかな?」
「ううん、それはうれしいけど。私も会いたいし。」
「じゃあまた後で。近くまで行ったら連絡するね。久しぶりに、おじいちゃんおばあちゃんに元気な顔見せてあげて。」
彼との電話を切って、ふたたび母へ連絡する。
「もしもし、お母さん。今から帰るんだけど……。」
母とは元々仲が良かったけど、父の死後より一層仲良くなったと思う。私は私で母を支えなくちゃって思っているし、母は母で父の分まで育てなくちゃって思ってくれているんだと思う。だから普段からわりと何でも話していたし、夕のことも当然伝えていた。
だから、さっきの彼との会話をかい摘んで話した。
母はイタズラな声色で、
「朝まで帰ってこなくてもいいんだよ?」
と言ってきた。
「そんなことしないよ。彼も、そういうのたぶん嫌う人だし。」
「冗談よ。でもその彼のこと、きっと離しちゃダメよ。」
「うん。離れていこうとしても離さないから大丈夫!」
「はいはい。ごちそうさま。じゃあ気を付けて帰ってくるのよ。」
前に会ってから7年ほど経っただろうか。久方ぶりの二人はさすがにちょっと歳を取っていたけど、変わらずやさしく、やっぱりどこかお父さんを思い出させる空気感があった。
父の死後すぐであれば、私がまだ思春期であればきっと、一目見ただけで泣いてしまっていただろう。
私の近況を話し、女優を目指してるというだけですごい喜んでくれた。父が生きていたらこんな風に喜んでくれただろうか。いつかテレビに出ている姿を見せるからねと、胸のうちに誓いを立てた。
『近くに着いたよ。また落ち着いたら連絡くださいませ。』
12時前くらいに、彼からラインが届いた。




